「なつめはまだ小学校の二年生だけれども、…


 「なつめはまだ小学校の二年生だけれども、夏休みが終わりに近づくのを憂鬱な気持ちで待つという経験は、早くも始まろうとしていた」。講談社文芸文庫に収められた庄野潤三の長篇家庭小説『ザボンの花』の一節だ。

 夏休みも、きょうを入れてあと2日。この時期の子供たちの心境は、庄野がこの小説を書いた昭和30年頃とほとんど変わっていないだろう。なつめちゃんと同じように、夏休みも終わりかと思う子もいれば、もうすぐ友達と会えると思う子もいるだろう。

 ただ共通の悩みは、この数日のうちに仕上げなければならない宿題だ。日記やいわゆる自由研究、作品。気流子なども終わり頃になって、何にしようかと悩んだ口だ。なつめちゃんは休みが終わる5日前、粘土で花瓶を作った。

 安倍晋三内閣も、いくつもの大きな宿題を抱えて夏休みに入った。中でも最大の課題は内閣改造だ。長期安定政権を目指す首相としては、山積する課題に取り組む強力な布陣を敷きたいところ。

 宿題の成果は、9月3日に発表される。宿題が簡単に進まなかった点は、ご存じの通りだ。しかしそれが、かえって自民党内の結束を強める方向に働くのではないか。

 大人が子供たちに習いたいのは、気持ちの切り替えの早さである。先生や友達と顔を合わせると、夏休みなどなかったかのように新学期をスタートできる。われわれもフレッシュな気持ちで再スタートしたい。