覚せい剤取締法違反などの罪で起訴された…
覚せい剤取締法違反などの罪で起訴された「CHAGE and ASKA」のASKA被告が、20年来薬物を使用していた、と自供した。報道に接したファンが、この期間に作られた曲に感動した自分は何だったのか、と疑問を持ったという話を聞いた。
文学の世界では、当時ヒロポンと呼ばれた覚醒剤を打ちながら小説を書いたという伝説が、坂口安吾や太宰治に関して言われる。が、彼らの読者が、自身の感動を疑うといった話は聞かない。
覚醒剤を打ちながら書かれたものであろうが、よい作品はよい。逆に、品行方正な状態でも、ダメなものはダメ、というのは、芸術作品の評価の仕方として定着している。作品が全て、作者の置かれた状況はひとまず無関係、と考える。芸術至上主義だ。
が、それでも、作品を書く過程で我が子を死なせることが許されるのか、という問いは存在する。文芸評論家平野謙(昭和53年没)は「芸術と実生活」という用語で、『破戒』(明治39年)執筆時の貧困の中で幼い子供3人を病死させた島崎藤村を厳しく批判した。
『破戒』が近代文学史上極めて重要な作品であることは確かだが、あえて平野は当時存命の藤村にこの問題を突きつけた。
病死については偶然の要素もあって、藤村ばかりを非難すべきではないとの見方もある。が、芸術至上主義の立場から「作品さえよければ、子供が何人死のうと関係ない」と言い切るのはなかなか難しい。