東日本大震災の際、福島第1原発1号機に…


 東日本大震災の際、福島第1原発1号機に炉心溶融事故が起きたのは、地震後発生した津波によって電源が失われたせいだった。

 ところが地震の揺れが原因とする説が流布され、それを主張するマスコミがいくつも見られる。地震の揺れの感覚的な恐怖を、短絡的に炉心溶融の脅威に結びつけ、反原発を訴えようとする意図さえ感じられるケースがある。

 ところが、このほど開かれた事故経緯などを分析する原子力規制委員会の検討会で、国会事故調査委員会の報告以降に見つかった記録から、津波到達後に1号機の電源喪失が起きたことを確認。「津波が原因で、地震による影響は考えにくい」とする内容の中間報告案が取りまとめられた。

 同案では、地震による影響で1号機原子炉圧力容器や配管に微小な漏洩(ろうえい)が生じた可能性があるとの指摘に対して、解析結果と事故時の記録などを照合。「炉心の露出・損傷に至らしめるような漏洩はなかった」として地震説を否定した。

 米科学アカデミーが公表した報告書でも、地震の揺れについて原発施設が「設計基準外」の事態に備える必要があるとの指摘はあるが、事故原因については「津波対策の怠り」を強調している。

 まず事故原因を正確に知り、その対策を中心に推進していくことが、大規模施設の安全管理のイロハである。いたずらに自然の脅威を言い立てるだけでは物事はうまく進んでいかない。