スピリチュアル・ワールド


富士山は永遠性の象徴

スピリチュアル・ワールド

高木庭次郎《白糸からの富士山》 1910年代 幻燈写真、ゼラチン 乾板に手彩色

 東京都写真美術館でコレクション展「スピリチュアル・ワールド」が開催されている。日本の宗教文化や民間信仰と視覚表現の接点をさぐった写真展で、日本人の精神性の領域をセレクトした写真によって表現している。

 構成は「神域」「見えないものへ」「不死」「神仏」その他で、明治から現代に至る作品183点が紹介されている。

 「不死」とは永遠性の象徴という意味で、ここで主として取り上げられているのは数々の写真家たちによる富士山の表象である。

 黒川翠山「富士と帆船」、高木庭次郎「白糸からの富士山」(1910年代)、岡田紅陽「神韻霊峰七面山」(1943年)、石川直樹「Mt.Fuji#28」(2008年)と見ていくと、時代にはそれぞれの色彩感や、造形感覚といったもののあることが感じられてくる。

 明治の作品には広々とした空間があり、大正期になると色彩が加わって華やかになり、昭和の戦争期に入ると大和魂のシンボルとなる。

 現代になると、石川直樹氏は登山家でもあり、斜面を登っていく運動の感覚そのものが構図にも色彩にも表現されている。

 石川氏の作品は明るく爽(さわ)やかで、この作品もいずれ他の作品のように古びていく時があることなど、今は考えられない。

 そしてどの作品にも共通しているのが、この霊峰の偉大さにたいする日本人としての崇敬の念だ。富士山は人間とは違って不死なのだ。7月13日まで。(岳)