ホトトギスは初夏の季語だが、この鳥に…


 ホトトギスは初夏の季語だが、この鳥にまつわる句が昔から有名だ。「鳴かぬなら殺してしまえほととぎす」(信長)、「鳴かぬなら鳴かせてみせようほととぎす」(秀吉)、「鳴かぬなら鳴くまで待とうほととぎす」(家康)。

 江戸時代後期、平戸藩主松浦静山作の随筆の中に記されている。実際に彼らが作ったものではないだろうが、静山の創作でもないようだ。それでも「戦国の三英雄」と呼ばれる人間の個性をそれぞれ物語っている。

 が、3作には共通点がある。政治目的があらかじめ設定されていて、それに従って殺したり、無理強いしたり、待ったりしている。「鳴くまで待とう」にしても、何かの目的のためで、いつまでも待ち続けるわけではなさそうだ。

 ところが、インターネットで調べると「鳴かぬなら僕が鳴きますホトトギス」というのがあった。ホトトギスが鳴くのを期待しているのだから、「僕」が鳴いても仕方がないのだが、気持ちは分かる。

 数年前、テレビ番組で一般女性が「鳴かないのならそれでいいじゃないですか」と語っていた。信長の末裔とされる元フィギュアスケート選手の織田信成さんは「鳴かぬならそれでいいじゃんホトトギス」と詠んだ。

 「殺してしまえ」と言ったとされる400年以上も前の先祖に比べれば、時代は一変してしまったし、英雄とスポーツ選手では立場も全く違う。両者の間に大きな落差があるのは当然だ。