福島第1原発の汚染水問題は、東京電力や…
福島第1原発の汚染水問題は、東京電力や福島県だけでなく日本が国として抱える頭の痛い問題だ。この汚染水対策の一つとして、汚染される前の地下水を海に放出する計画の実施がようやく見えてきた。福島県漁連が容認することを決めたのだ 。
この計画は昨年5月、東電が組合長会議で明らかにしたが、風評被害を懸念する漁業者が反発。その説得と調整に1年近くかかった 。
福島県漁連としては苦渋の決断だ。原発事故以後、福島県の漁業者は近海での操業を自粛。本格的な操業再開へ向けて、試験操業と販売を行ってきた。こうした努力が、風評被害で水の泡になるのは耐え難いことだろう 。
それでも「廃炉の一助になるよう責任ある対応をした」(野崎哲福島県漁連会長)のは、立派な決断だ。ゆくゆくは福島県の漁業の復興にもプラスになるはずだ 。
それにしても、風評被害というのは厄介な代物だ。人間の心の弱さにつけ込んでどんどん大きくなる。集団心理的な側面もあろう。その芽を摘むのは、正確な情報と理性的で強い心だ。消費者の後押しがあれば、被害防止に大きな効果を上げることもできる 。
東電や国は、苦闘する福島県漁連をバックアップするために、もっと反風評キャンペーンを強化すべきだ。もちろんこれは水産物に限らない。野菜やコメ、牛肉などの農畜産物についても、もっとTVなど使ってキャンペーンを展開することが肝要である。