竜巻がのみ込んだ家々「街が消えてしまった」
米ケンタッキー州を襲う、「まるで紛争地帯か映画の世界」
人口約1万人の米南部ケンタッキー州メイフィールドは、一晩で「街全体が消えてしまった」。家屋、工場、歴史的建造物。竜巻が全てをのみ込むように巻き上げ、がれきに変えてしまった様子を、住民の銀行員スティーブン・エルダーさんがCNNテレビに語った。「何百年もここにあった教会が地に落ちてしまった。まるで紛争地帯か、映画の世界のようだ」。
竜巻が襲う直前、クリスマスの書き入れ時を前に、地域で有数の雇用数を誇ったろうそく工場は、夜勤で110人を動員して操業を続けていた。ニューヨーク・タイムズ紙によると、竜巻が工場を襲った10日夜、従業員のイザイア・ホルトさん(32)は建物の外でレモネードを飲みながら携帯電話で動画を撮って楽しんでいた。
次の瞬間、動画に映ったのは、遠くで救急無線が鳴り響く中、ホルトさんが地面にしがみつき耐える姿だった。ホルトさんは携帯電話に向かって「みんな愛しているよ」と繰り返した。
その後、気が付いた時には病院の一室にいたという。肋骨(ろっこつ)を折る重傷を負ったが、「手足を失ったわけでも、死んだわけでもない」と前を向いた。工場ではこれまでに8人の死亡が確認された。
ケンタッキー州のビシア知事は13日の記者会見で、州内で数千の家屋が損壊したと述べた。メイフィールドでは水や電気が不通となり、地元メディアは地域のコミュニティーセンターに身を寄せ不安そうに過ごす住民らの姿を伝えた。(ニューヨーク時事)