照屋守之自民党県連幹事長、沖縄県議会で異例の地元紙に疑問

埋立承認で知事批判の報道

多くの県民は「承認」に理解

 沖縄県議会2月定例会では、21日から4日間、仲井真弘多(ひろかず)知事に対する、日米両政府が普天間飛行場の移設先として合意している名護市辺野古の公有水面埋立申請を承認したことについての理由や経緯を究明する調査特別委員会(百条委員会)が開かれた。3月6日の一般質問では、知事批判一辺倒の記事や沖縄戦当時の慶良間諸島での集団自決軍命説の記事など地元マスコミの一方的な報道姿勢に疑問が呈された。(那覇支局・豊田 剛)

集団自決軍命説の真相検証を

400

一般質問する照屋守之議員

 2月21日から始まった百条委は、野党側が「埋立承認は知事の県外移設の公約に違反し、県民への説明責任が果たされていない」と設置を要求、野党会派などの賛成多数で設けられたもの。

 野党側の質問に対し、仲井真知事は一貫して、「厳密に申請書をチェックして、審査基準に適合しているということで結論を出した。公有水面埋立法の基準では、承認という答えしか取れない」と承認は正当だと主張。「最終的には、県外を求めており、公約違反ではない」と反論した。

 こうしたやりとりを地元マスコミは連日、「説明責任を果たしていない」「公約違反」などの記事に仕立て、知事批判を展開した。

 また、石垣市長選告示日の2月23日、沖縄二大紙の一つである琉球新報は、1面トップで「石垣に(陸自部隊の配備)2候補地、防衛省が来月決定」と報じた。「複数の政府関係者」の情報として、防衛相が石垣島のサッカー場など2カ所を候補地に挙げ最終調整に入り、3月までに候補地を決めるというのだ。また、翌日には沖縄タイムスが同様の記事を1面に掲載した。

 自民党沖縄県連合会石垣市支部は即日、「防衛省に確認したところ事実無根であることが明らか」になり、琉球新報に抗議をした。防衛省も24日、黒江哲郎官房長名で「候補地を特定し最終調整に入った事実はない」として琉球新報社に対し、訂正を求める内容証明書付きの申し入れ文書を送付。日本新聞協会に対しても、西正典事務次官名で「正確・公平さに欠け、適切な報道を求める」との申し入れ文書も送っていたことが27日、明らかになった。

 防衛省が琉球新報と日本新聞協会に申し入れを行った理由について小野寺五典防衛相は2月28日、「(報道が)事実と違う内容だ」と述べるとともに、「間違った報道が地方選に影響を及ぼすことは適当ではない。(メディアには)報道の自由があるが、事実と違うということでの抗議だ」と説明した。

 「琉球新報は、石垣市長選に関連付けたものではないと言っているようだが、革新系の大浜候補を利する内容であることは、地元の人なら誰でも分かる。地元マスコミの常套(じょうとう)手段だ」。自民党県連幹部はこう分析した。こうした地元メディアの報道を受け、自民党沖縄県連の照屋守之幹事長は3月6日の一般質問で異例のマスコミ報道への疑問を展開した。

 照屋氏は一般質問の冒頭、「多くの市町村長・議会、県民が知事の承認に理解を示している」と指摘。その上で、「百条委員会は知事を追い詰めるための野党の策略であり、真相究明が目的ではなく、単に設置することが目的ではなかったのか」と追及。

800

答弁する仲井真弘多知事(左)と高良倉吉副知事(右)

 照屋氏によると、自民党沖縄県連が昨年末に米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先を「県外」から「辺野古(名護市)容認」に変更したことについて、照屋氏ら自民党県連幹部は年末年始にかけて、支援者にお詫びと説明に奔走した。「有権者はおおむね理解してくれている」という。

 照屋氏のマスコミ報道に対する疑問の矛先は、沖縄戦の慶良間諸島における集団自決で「軍命説」にも向けられた。

 「生まれてずっと地元2紙を読み、100%信頼してきた。慶良間諸島で起きた集団自決でも軍命があったと思ってきた」と語った後、弊紙「世界日報」の「パンドラの箱掲載拒否訴訟」号外(平成25年12月15日号)の内容の一部を読み上げ、「最近、軍命はなかったこと、そして、軍命には遺族に支払われる援護法とのかかわりがあることを知った」として、県の関係部局に事実関係を問いただした。

 これに対し、県の担当部局は「(世界日報社の号外について)内容を十分に吟味していないのでコメントは避けたい」と明確な答弁を避けた。

 さらに照屋氏は、「地元メディアで報じられていない集団自決の真相および援護法との関係について実態を調べるよう」にと県に要求した。

 これに対し、高良倉吉副知事は「軍命の有無については学者の間でも意見が分かれている。裁判の判決もある。県として情報を検討・収集して正確に整理していきたい」と述べ、後日県の見解を明らかにする意向を示した。

 照屋氏は最後に、「現在では県内2紙は今や、政党や政治家、知事よりも社会や政治に大きな影響を与える存在になっている。県民の知る権利のもとに公平公正な報道を求めたい」と訴えた。

 議会を傍聴した沖縄戦ドキュメンタリー作家の上原正稔氏は「慶良間諸島の集団自決があった3月に、議会で問題提起された意義は大きい」と話した。