眞子さん小室さん結婚、識者に変化する皇室の在り方語らせた文春
会見に総じて批判的
締め切り間際の記者会見だったが、2日後の発売(28日木曜日)には間に合わせた。週刊誌の「小室眞子さん」と小室圭氏の会見記事だ。11分と短いもので、質疑応答はなし、質問も限られたメディアが代表して出し、文書での回答というものだった。この経緯も内容も新聞・テレビが詳報したが、さて、これまで散々このカップルを追い回してきた週刊誌がどう報じたか、だ。
一方的に眞子さんが「誹謗(ひぼう)中傷」を受けた、「謂(いわ)れのない物語」が独り歩きしたと訴えて終わった、これで小室家の借金問題などの説明の機会が失われた、などと、総じて批判的である。何よりも会見で質疑応答が直前になって取りやめられたことへの反発が強い。
メディアとしては当然なのだろうが、そればかりを追究しても“民間人”となった眞子さんをこれ以上、追い回せば“ストーカー”になってしまう。その憤懣(ふんまん)が誌面に出ている。
窮屈な皇族方の環境
だが、それよりも問題なのは皇室の在り方がここで大きく変化したことだ。それに注目する記事を拾った。週刊文春(11月4日号)が「私はこう考える」として識者のコメントを集めた中で、作家の橘玲氏は、「戦後の日本人はずっと、皇室に『理想の家族』を投影してき」たが、「価値観の多様化」で、皇族であっても「自分らしく生きたい」と変わってきたという時代の変化に着目している。
その上で、「皇族の自由な人生を認めつつ、国民が納得するような『理想の家族』を演じるということになりますが、はたしてそんなことが可能なのか」と疑問を投げ掛ける。もっともな話だ。
天皇を「国民統合の象徴」として敬う一方で、「皇族らしく」「皇族なんだから」という要求はこれまで通り皇族に向けられるのだろう。公務からプライベートまで「理想」「見本」であるべきだという視線の中で、皇族は窮屈に生きなければならないのか。
そんな環境を「ブラック企業」としたのがコラムニストの矢部万紀子氏だ。皇室を「株式会社皇室」と例えて、女性の役割、結婚、激務などからブラックと呼んだのだが、そこから抜け出す道を眞子さんは「結婚」という狭い間口を通して見いだしたとみる。確かにそうだ。「新たな人生へと踏み出す門出に、ただただエールを送りたいです」は国民の多くが感じていることだろう。
とはいえ、眞子さんの選択は女性皇族の結婚に大きな影響を与える。美智子上皇后陛下は既にそのご心配を明らかにしていた。同誌は眞子さんがあいさつにに上がった前後に「苦悩を吐露された」というエピソードを載せている。
美智子さまは「(結婚後も)伊勢神宮の祭主を務める黒田清子さんのように、眞子さんにも結婚後も皇室を支えて欲しいとお考えでした」とし、そのような道を取らなかった眞子さまのケースが「佳子さまや愛子さまなど若い女性皇族に与える影響を、いたく気にしておられました」という「美智子さまの知人」の話を伝えた。
会見では眞子さんが結婚後の海外移住を考えていたと明らかにしたが、だとしたら、美智子さまの願いは最初から無理だったということで、たとえ、小室家のトラブルがなかったとしても、眞子さんは皇室を、日本を出たということだ。
課題考える特集期待
女性皇族のみならず、皇族の減員は深刻な事態になっているという。各種団体の「名誉総裁のような役職をいくつも掛け持ちしている」のが現状で、それが前述の「ブラック」の一因だ。
加えて「自分らしく生きたい」と考えが変わってきている中で、皇室、皇族の在り方は根本的に考えなければならない事態になっている。ところが、会見を受けての号なので、話題がそれに集中するのは仕方ないとしても、女性皇族の結婚問題、公務の在り方など、皇室の課題を取り上げる視点がもっとあってもよかったのではないか。今後、そのような特集が出てくることを期待する。
(岩崎 哲)