大英博物館、葛飾北斎の「失われた作品」初公開
森羅万象を描いた100点余り、「生命を持っているよう」
日本を代表する江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎(1760~1849年)の特別展が30日、ロンドンの大英博物館で始まる。北斎の「失われた作品」と言われる未公開作品100点余りが世界で初めて一般公開される。
北斎が1820年代~40年代ごろ、未出版の図鑑「万物絵本大全図」のために制作した版画用の下絵103点を中心に展示。これらは1948年にパリで競売に掛けられた後、フランスの個人収集家が所有していたとみられ、その間人目に触れることがなかった。2019年に再発見され、翌年に大英博物館が購入、収蔵した。
「万物」とうたわれる通り、動植物や庶民の生活、風景、神話などテーマはさまざまで、インドや中国など外国の題材が多い。一般的に下絵は版画の制作過程で消失するが、これらの作品は、図鑑が何らかの理由で出版されなかったため破損されることなく残った。
大英博物館のハートウィグ・フィッシャー館長は「北斎の芸術では無限の創造性と繊細なユーモア、深い人間性が一体となっている。重要な作品を世界と共有できることをうれしく思う」と表明。アルフレッド・ハフト学芸員(日本コレクション担当)は「下絵はエネルギーに満ちており、描かれている点や線の全てが生命を持っているようだ」と評した。展示は来年1月30日まで。(ロンドン時事)