アラハバキ神の謎、古代東北の安倍氏が奉斎
製鉄産業と深く関わる
奥州平泉の前史をつくったということで、古代東北の豪族、安倍氏に対する関心が高まっているが、いまだ謎が多い。その解明の鍵の一つが、安倍氏が奉斎したというアラハバキ(荒覇吐、荒吐、荒脛巾)神だ。
不明な点が多く、歴史的経緯や信憑(しんぴょう)性については諸説あるが、アラハバキを祀(まつ)る神社は約150社で、島根県以東の各地に見られる。東北以外では客人(まれびと)の神、門客神としてまつられている例が多く見られる。
民俗学者で古代史家の谷川健一氏によれば、陸奥国鎮守の多賀城において、阿良波々岐明神が築地塀のすぐ外に置かれていることから、朝廷による「蝦夷(えみし)をもって蝦夷を制す」伝統的政策によって、もともと蝦夷の神を蝦夷の攻撃から守るため塞の神として配したという。やがて門客神として体裁をととのえられ、大和朝廷の神杜の中に摂杜または末杜として組み入れられていった、と述べている(『白鳥伝説』)。(市原幸彦)