千秋楽を迎えた東京・歌舞伎座の5月公演の…


 千秋楽を迎えた東京・歌舞伎座の5月公演の第1部を観た。緊急事態宣言下で少し躊躇(ちゅうちょ)するところはあったが、入場制限など感染対策はしっかりしている。実際、行ってよかった。

 「三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)」では「月も朧(おぼろ)に白魚の篝(かがり)も霞む春の空」の名せりふで有名なお嬢吉三役の尾上右近さん、お坊吉三の中村隼人さん、和尚吉三の坂東巳之助さんら注目の若手が登場。溌溂(はつらつ)とした演技を観(み)せてくれた。

 続く舞踊劇「土蜘(つちぐも)」では、尾上菊五郎さんの孫で女優・寺島しのぶさんの長男、寺嶋眞秀(まほろ)君が太刀持音若を堂々と演じていた。フランス人のご主人との間に生まれ現在8歳の眞秀君、将来どんな役者になるのか楽しみだ。

 歌舞伎のこれからを担う役者たちの演技が明るい気持ちにしてくれた。緊急事態宣言で初演から9日間は中止したが、宣言延長の12日から公演を始めたのは正解だった。入場制限を行った上、通常は昼夜2部制のところ、3部制にし、1部2時間ほどのプログラム。大向こうの掛け声もなしだ。

 こうしたことを考えると、東京都や大阪府などの休業要請も、施設やイベントの実態をよく把握した上で行う必要がある。美術館や博物館など、よほど人気の企画展が行われない限り、大体空いている。感染リスクの最も低い文化施設と言っていいだろう。

 都は映画館や美術館などに対し、宣言の再延長となる6月1日からは休業から時短営業の要請に緩和することを決めた。