もう十四、五年前になるが、原発関連団体の…
もう十四、五年前になるが、原発関連団体の主催で中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)を見学するツアーがあり、一般市民50人ほどが参加した。現場の核施設を前にし、職員が発電の仕組みなどを熱心に説明してくれた。
ところが東京電力福島第1原発の事故で大半の原発施設が止められ、事業主体と消費者との間にこういった信頼関係醸成の機会がほとんどなくなった。今では原発施設を“異物扱い”する勢力が少なくないようだ。
茨城県など9都県住民が日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)の安全性を問題にし、運転差し止めを求めた訴訟。水戸地裁は巨大地震などによる自然災害が起きた時の避難計画が不備だとして同原発の運転を認めない判決を下した。
判決文では「大規模地震が発生した場合には、住宅が損壊し、道路が寸断することも想定すべきだが(中略)、複数の避難経路の設定はされていない」などとした。だが本来、自然災害時の避難計画は地元自治体がその地域全体の減災を勘案し策定するものだ。
また同原発は、運転の可否を決定する原子力規制委員会の審査対象をすべてクリアしている。まず原発の運転開始時期を予定し、地元住民との信頼関係を厚くしながら街全体の従来の防災体制を補強していくという判断が筋だ。
福島の原発事故では住民に1人の死者もなかった。一事業体を狙い撃ちにした避難計画は整合性を欠くものとなるのではないか。