隆盛するKポップの実態

日本ファンの購買力が支えに

 BTS(防弾少年団)が米ビルボードチャート1位を何週も続け、欧州でも韓国アイドルがアジアを代表する勢いで、東南アジアの歌謡シーンを席巻しているKポップ。韓国人の誇りであり、自尊心を満足させている。

 だが、このKポップは「日本」によって支えられているとしたら、韓国の人々はどう思うだろうか。張った胸がいくらかは萎むかもしれない。

 今やKポップや韓国映画・ドラマなど「韓流」の盛隆には目を見張るものがある。2010年代から急速に発展してきて、あたかも世界中で成功しているビジネスモデルのように受け止められている。だが、その収益の3分の2を最大の「お得意様」である日本に頼り、そこで「稼いだ莫大(ばくだい)な利益を米国など比較的未開拓な市場への進出の動力にしている」というのが実態だ。

 この韓国人にしてみれば、あまり面白くない事実を“暴露”したのが「月刊朝鮮」(3月号)に掲載された大衆文化評論家の李文源(イムンウォン)氏による「日本は韓流の菜園であり足場」である。

 李氏は「Kポップのグローバル化の素顔は、日本市場に非常に偏った構造」だと指摘する。日本以外の米国や中国、東南アジアには音源を配信するだけとするなら、日本には日本語歌詞の日本向けアルバムを企画し特別扱いなのだ。昨年のアルバム輸出量を見ても、半分は日本で、米中は合わせても及ばない。

 日本でKポップが根強い人気があるのは周知のことだが、どうしてそれほど流行しているのか、言葉を変えれば安定した市場なのか。その理由を李氏は日韓は「ファンダム文化」が似ているからと分析する。

 ファンダムとはファンとそれが形成する集団や文化をいう。日本でもアイドルのファンは熱狂的で強固だ。単に音楽や公演を見に行くだけでなく、写真集やカレンダー、携帯ケース、Tシャツなど関連グッズが販売され、プレミアム化されて、ファンだけが享受できる特典が用意されている。欧米にも同じような収益構造がないわけではないが、日韓ほどではない。

 反日不買運動が根強い中で、韓国アイドルは日本ファンの購買力に支えられている、つまり「自尊心」を日本に依(よ)っているとは皮肉だ。文在寅(ムンジェイン)大統領がいう「ツートラック」が成就している。

 編集委員 岩崎 哲