新型コロナウイルス禍の重たい空気は続くが…
新型コロナウイルス禍の重たい空気は続くが、季節は移ろい秋も深まりを見せている。久しぶりに東京・多摩川の土手に足を伸ばすと、濃い黄色の小さな花を多く付けた1~3㍍ほどの高さの草が道沿いに遠くまで生えている。
セイタカアワダチソウというキク科アキノキリンソウ属の多年草で、代萩とも呼ばれるそうだ。春の菜の花の明るい黄色ではなく、少し橙色が入って寂しい感じもする。
市中でかっと照り付ける太陽の下、百日紅の深紅が目に染みたのは1カ月少し前のこと。その後、稲刈りのシーズンには、きらきらと輝く陽(ひ)が黄金色の稲穂を映し出した。
わが国の四季の変化の中に色の特徴を見つけ出し利用しようとした人は、古来少なくないだろう。多彩な植物群を使った染色の技術が日本文化に深く根付いている。飛鳥時代には、紫を生み出す紫草が自然に生育するだけでは足りず、栽培に至った記録があるという。
江戸時代には「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」という墨染めによる主張が好まれた。昨年急逝した染色家の吉岡幸雄さんによると「人気のイタリアブランドのスーツのシックなニュアンスグレーを、日本の男はすでに三百年以上前に、何十色も見分けて色名をつけながら、着こなしていた」(『吉岡幸雄の色百話』世界文化社刊)と。
現在では、実りの季節の主色は茶色で「石榴の果皮」「栗、胡桃、団栗(どんぐり)、矢車(やしゃ)といった木の実」(同書)が使われる。植物を用いる染色教室が人気だ。