毎年3月に開かれる中国の全人代(全国人民…
毎年3月に開かれる中国の全人代(全国人民代表大会)は日本の国会に当たる。今年は新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)で5月に延期されたが、テレビには毎年恒例の情景が映し出された。華やかな民族衣装を着て開会式に参加する少数民族自治区の代表たちの姿である。
いかにも中国が少数民族の文化を手厚く保護しているような印象を与える。全人代が民主国家の国会と似て非なるものであることは分かっていても、各民族が政治的な自由を享受しているような錯覚すら覚える。
これ見よがしのパフォーマンスを大々的にテレビが報道するのも、実際はそこに大きな問題を抱えているためと見ることができる。
どの民族衣装も、民族の歴史と伝統と誇りを表している。しかしそれ以上に民族文化の核心にあるのは、言語と宗教である。中国の苛烈(かれつ)な弾圧に抵抗を続けるチベット自治区ではチベット仏教、新疆ウイグル自治区ではイスラム教が人々の生活・文化の根っこにある。信教の自由を認めない共産党政権とは根本的に相容れない。
一方、内モンゴル自治区では当局のモンゴル語教育廃止に人々が命懸けの抵抗を行っている。当局は言語を奪おうとして、ナショナリズムという「寝た子」を起こしたのだ。
東京では、これら少数民族の在日活動家らが衆院議員会館で中国を糾弾する会議を開いた。チベット、ウイグルそしてモンゴルと、中国共産党は自分の手で対中包囲網を完成させようとしている。