代替政権めざす立憲 国防を担う準備はあるか

《 記 者 の 視 点 》

 10日夜のフジテレビ討論番組に、民主党野田佳彦政権の防衛相、森本敏拓殖大学総長と安倍晋三政権で防衛相を務めた中谷元、小野寺五典両衆院議員の3人が登場し、「『敵基地攻撃能力』とあるべきミサイル防衛」について議論した。この中で森本氏は、防衛問題における政府と政党(政権与党)との関係に話が及んだ時、興味深い発言をした。

 同氏は、「政党と政府は互いに足らない部分を補い合って、より良い政策に持っていく努力を役割分担しながらやってきた」と述べた上で、「お2人ご存じだけど」と断ってから、「防衛大臣はいわゆる国防族の全幅の信頼がないと仕事をやっていけない。私は全然なかったから。国防族って民主党にいなかったから。…だからなかなか難しい」と述懐したのだ。

 ここでの「防衛族」は自民長期政権時代の族議員ではなく、防衛官僚や制服組と対等以上に渡り合えるぐらい専門知識と実務に通じた議員の意味だろう。同氏は「行政府では憲法解釈に触れるような政策はなかなかできないので、政党の中で提言していただいて、両方が納得して政策を作っていくやり方が今までのルール」だと指摘。与党にその力がなければ、政府も力を発揮できないという“実体験”を吐露したのだ。

 立憲民主党は15日、民主党から民進党を経て分裂した国民民主党に対し、両党を解散した上で「新設合併」方式で新党を結成し、党名を「立憲民主党」、略称を「民主党」にしようと公式提案した。従来の「吸収合併」方針を取り下げ、「一日も早く現政権に代わるまっとうな政権を実現する責任」を果たすための提案(枝野幸男代表)だという。

 「まっとうな(代替)政権」を目指す以上、国防への取り組み強化は基本中の基本だが、立憲にその準備があるのかが問題だ。

 9日、参院外交防衛委員会の閉会中審査で、立憲・国民など共同会派から白真勲議員がイージス・アショア配備撤回等について質問した。その際、配備計画の停止を伝える防衛省の文書を普天間基地の状況に置き換えた文書を作って提示し、(陸上イージスと辺野古の事情に)「違うところがあれば指摘願いたい」と尋ねたというのだ。

 河野太郎防衛相は「まったく違うと思います」と一蹴したが、防衛問題を“言葉遊び”にしてしまう感覚は、立憲の防衛意識の水準を如実に示している。

 野党なら、憲法9条の過去の一時期の政府解釈だけを絶対視し、それを変えたというだけの理由で「立憲主義に反する」と猛批判しても事が足りるが、政権与党はそうはいかない。刻々変化する日本の安保環境の中で、憲法と背馳しない範囲で如何(いか)にすれば国を守れるか考え抜く。従来の解釈で国が守れないなら、今まで何度もあったように解釈を変えてでも国を守ることを選ぶ。それが政府・与党の責任だ。

 そんなメンタリティーがなければ、とても国防を任せることはできない。それが、ごく普通の国民の感覚ではないかと思うのだが。

 政治部長 武田 滋樹