中国人留学生の警告

韓国に浸透する共産ウイルス

 韓国で学ぶ外国人留学生の約半数は中国人が占め7万人弱。留学動機に国内進学の困難や“箔(はく)付け”が多い中で、共通しているのは自由な学問風土を求めて中国を出て来ることだ。

 月刊誌新東亜(5月号)が「中国の留学生メール」で彼らの本音を載せていて興味深い。自由世界に出て来て、中国がいかに思想的に統制され、偏った教育をしているかを実感したという。ここまでは予測できることだが、そんな彼らの解放感を閉ざしてしまうようなことがあるのはあまり知られていない。「留学生を監視する留学生」がいることだ。

 留学当初「さまざまな書籍や資料を自由に読むことができる」楽しみを満喫していたこの留学生は、近づいてきた中国人学生と親しくなる。共産主義や中国政府の話が出て、少し批判じみたことを言った途端、学生の顔色が変わる。さらに彼が共産党の海外担当者と接触していることが分かる。完全にマークされていたのだ。

 この留学生が特に当局から監視されるような重要な研究や、反政府活動に関係していたわけではない。ごく普通の学生だが、それにさえ監視を付ける中国共産党の統制監視に「恐ろしさを感じた」という。

 しかし、香港の民主化デモや今回の新型コロナウイルス対応を見て、留学生は共産党の「人命軽視、隠蔽(いんぺい)体質」を改めて実感。その中国の実体を伝えようと新東亜に投稿したわけだが、ただ共産党の恐ろしさを知らせるためではなかった。韓国の中国を見る目に危惧を感じたからである。

 「韓国はいつの間にか中国に似てきている」「韓国の政治家は習近平の『中国の夢』に参加しようとしている」「若い世代、進歩性向の人々が中国共産党の実体を正しく見ないまま、無批判的に中国に従う姿を見て恐ろしい」「韓国は中国の植民地になってしまう」という心配だ。

 おそらく韓国読者は反発するだろう。自由世界の一員だと思っている彼らが共産主義の不自由な監視社会、人権無視社会に住みたいとは思っていないからだ。ところが中国人留学生の目を通してみれば、韓国は危うく映る。「共産主義というウイルスが浸透している」「中国共産党は分からないように韓国社会の奥深くに“獣魔”を忍ばせている」のだ。その証拠に「買収された学者が中国を礼賛」しているというわけだ。

 この警告を自由韓国はどう聞くのだろうか。

(編集委員 岩崎 哲)