「はじめまして わたしがママよ」と、優しく…
「はじめまして わたしがママよ」と、優しく呼び掛ける大ヒット曲「こんにちは赤ちゃん」で知られる歌手の梓みちよさんが76歳で亡くなった。
茶の間のテレビを囲み、一家団欒(だんらん)を楽しむ時代だった。毎週土曜日の午後10時から放映されたNHKの人気音楽番組「夢であいましょう」で「こんにちは赤ちゃん」が紹介されると、すぐ話題に。昭和38(1963)年のことだ。
故永六輔さんが作詞、故中村八大さんが作曲。永さんは、プロデビュー2年目の梓さんに「女性には母性があって胸に玉のような赤ちゃんを抱くようなイメージで」とアドバイスしたという。
昭和39年、梓さんは東京で開催された学習院初等科の同窓会に招待され、出席されていた昭和天皇、香淳皇后の御前でこの曲を歌唱。日本初の天覧歌手となり、国民的歌手に育っていった。
時代を映し出す曲だった。ちょうど前回の東京五輪前後で高度経済成長期。明るい未来をうかがい、若い母子、夫婦の愛を歌う伸びやかな曲調、歌声が魅力だった。東京に憧れる若者、そして茶の間の老若男女が心を奪われたのは必然的だったように思う。レコードの売り上げは100万枚以上に。
梓さんはその後、「二人でお酒を」などのヒット曲を出したが、次第に歌番組の出演からは遠ざかった。先月29日に都内の自宅で亡くなっているのを訪ねたマネジャーが見つけた。昭和の時代のきらめきを歌った歌手がまた1人いなくなった。