<うれしさは春のひかりを手に掬(すく)ひ>…


 <うれしさは春のひかりを手に掬(すく)ひ> 野見山朱鳥。やや暖冬と言われた昨年は、年間を通しても気温が高かった。平均気温が平年(2010年までの30年平均)を0・92度も上回り、統計開始の1898年以来で最高だった(気象庁発表)。

 これは1990年代以降に顕著になった地球温暖化の影響で、今年も暖冬となりそうだ。厳冬が続いた一昨年までは、この時期に唱歌「早春賦」の一節「春は名のみの風の寒さや」を借りて「暦の上では春が立つ2月だが……」と呟(つぶや)いたもの。

 それが今年は一変して、春を感じ、春の足音が聞こえ、春の光が見えるのである。立春は節分の翌日。節分は四季を分ける日のことで、かつては翌日も立春のほか立夏、立秋、立冬と年に4回あった。

 春の節分だけになったのは、春夏秋冬というように春から年が始まるという考え方をするようになったから。節分の豆まきは春を迎える前の簡略化された祭りで、家の恵方の部屋の前に霊力がこもるとされる豆をまく行事。豆(魔滅=魔の目が滅する)が邪気を祓(はら)うというのだ。

 「福は内、鬼は外」の発声は、寒さに身を縮ませて過ごしてきた冬から、暖かな希望の春を目前にして心躍らせる人々の讃歌(さんか)とも聞こえる。

 まだ冴(さ)え返(かえ)る日もあろうが、今年は梅の便りも早そうだ。2月は「梅つ月」とか「梅見月」ともいうが、文字通りの月となるのに加え、鶯(うぐいす)の声も聞けるかも。<鶯に手もと休めむながしもと> 智月(ちげつ)。