新学習指導要領が本格始動 資質・能力を育む体制づくりを

《 記 者 の 視 点 》

 今春からいよいよ全国の公立小学校で新学習指導要領が全面実施される。教育って何だろう?との素朴な疑問に、いまだ確たる自信を持って返答する言葉がない。教育担当になった時からの“大きな課題”だ。

 教育とは、ブリタニカ国際大百科事典によると、以下のように書いてある。

 教え育てること。知識,技術などを教え授けること。人を導いて善良な人間とすること。人間に内在する素質,能力を発展させ、これを助長する作用。人間を望ましい姿に変化させ、価値を実現させる活動。

 以上のように教育という語は多義に使用されるが、陶冶(とうや)、教化、育成、形成などと同義にも用いられ、またそれらを総括する語として広義にも用いられる。出典としては、『孟子』に「得天下英才而教育之」(天下の英才を得てこれを教育す)とあるのが初めとされる。また英語、ドイツ語、フランス語などの語源は、「引き出す」あるいは「引き上げる」の意味であるとされている。

 この先、社会がどのように変わっていくか、予測することがますます難しくなる時代の中で、子供自らが、自分の良さや可能性を認識し、他者を尊重し、多様な人々と協働しながら豊かな人生を切り開き、持続可能な社会の担い手となれるような環境づくりが問われている。

 初等中等教育局教育課程企画室長の板倉寛室長は、新学習指導要領について、①これまで大切にされてきた「生きる力」を育むという目標は変わっていない②これまで主眼が置かれていた「何を学ぶか」以上に「何ができるようになるか」「どのように学ぶか」を重視している③授業で得た知識や技能を日々の生活や他の教科と関連付けて深く理解できるような「思考力」「判断力」を身に付け、それを伝える「表現力」も培っていく④人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力、人間性等」の涵養(かんよう)だ―としている。

 しかし、経済協力開発機構(OECD)が実施した国際教員指導環境調査では、日本の小中学校教員の労働時間は最も長く、小学校で54時間、中学校で56時間、OECD平均の1・5倍だという。ただでさえ“過労死レベル”といわれる教員の労働時間なのに、小学校の新学習指導要領では英語、道徳の教科化とともに、プログラミング教育も授業に入ってくる。

 「教員の働き方改革」は学校に居る時間を短くすれば済むという問題ではない。担任がクラスに責任を持つのは当然だが、担任でなくてもできることを専門家に任せることも必要だ。

 クラブ活動の顧問は外部指導員に、給食費や修学旅行の積立金などの徴収は事務職員に、児童・生徒の精神的ケアはスクールカウンセラーに、生育環境・経済格差も問題はスクールソーシャルワーカーに、学校の安全は警備会社に、健康管理は医師・看護師・養護教員に相談しながら道筋を示すなど、家庭や地域との連携を模索しながら“チーム学校”としての体制づくりも必要だ。

 子供一人一人に目を配り、必要な資質・能力を育むことが教員の使命である。クラス全体を見渡しながら、学力・人間性の向上を目指し、将来、人生の岐路に立ち、決断をする時に判断を誤らないような人材育成をしたいものだ。

 教育部長 太田 和宏