明けましておめでとうございます。令和2年目…


 明けましておめでとうございます。令和2年目の今年の干支(えと)は「子(ね、ネズミ)」。人間に身近な動物というと犬や猫を挙げる人がほとんどだろう。しかし昔は、同じ家を棲(す)みかとするネズミこそ、最も身近だった。

 日本でもネズミが登場する民話が各地に伝わっている。石川県を中心に伝わる「鼠(ねずみ)浄土」は、小さい頃に「おむすびころりん」という題名で読んで、不思議と印象に残った。

 ある時お爺(じい)さんが山へ柴刈りに行き、昼飯におむすびを食べようとしたところ、手から滑り落ち、転がって穴の中に落ちてしまった。仕方なく木の根に座っていると、一人の姉さんが「先ほどはおむすびをありがとうございました」と言って、御殿のような家に案内し歓待してくれた。

 その姉さんが実はネズミだったことが分かるわけだが、お金までお土産にもらってお爺さんは家に帰る。その話を聞いた隣の欲張りなお爺さんが……というふうな話である。欲張りを戒めるという教訓的なことより、ネズミの穴の中に立派な御殿があったというのが、楽しく面白い。想像力を掻(か)き立てるものがある。

 あんな暗くて狭いところにと人間は思うかもしれない。だが、ネズミにとっては結構快適なのだろう。何より穴蔵は外敵から身を守ってくれる。安全・安心が確保されれば、そこは浄土であり、パラダイスなのだ。

 安全と安心は幸福の第一条件である。それは個人や家庭だけでなく、国家においても同じである。