東京・青梅市で今月起きた殺人事件。大金が…
東京・青梅市で今月起きた殺人事件。大金が奪われたもようだが、被害者は億単位の現金を近所の住民に見せびらかしていたという。「盗んでくれ」と言っているようなもので、常識では考えにくいのだが、見せびらかしは世間に普通に存在する。
有名芸能人や成功した実業家らが自宅を見せびらかす光景はテレビでよく見掛ける。家具や美術品も含めて、得意げな表情で公開する。そこからは、防犯上の懸念はうかがえない。
一戸建てであれマンションであれ、彼らの自宅の所在地は伏せられるのが常だが、見ていて「テレビ局も有名人側も、犯罪の可能性は考えないのだろうか?」とは思う。
自慢や見せびらかしは人間の常だから、テレビで公開されるほどのことはなくても、普通の人間がこぢんまりと自慢するのは自然な話だ。自慢話を生涯一度もしたことがない人はいないだろう。こうした範疇(はんちゅう)を超えた度外れた見せびらかしが、今回の事件の発端になったのではないか。
「自慢はしたいが犯罪は怖い」というギリギリのところで芸能人も実業家も自宅自慢をしているのだろう。自己顕示にも一定の限界はあるはずだが、線引きは難しい。今回の殺人事件は、肥大し過ぎた自己顕示欲がアダになった。
噂(うわさ)の伝播(でんぱ)力への過小評価があったのか。噂は当人の予測を超え、意外に速く、広く、遠くへと伝わることがある。悪いのは犯人に決まっているのを認めた上で、そんなことを考える。