国際原子力機関(IAEA)は、原子力の…
国際原子力機関(IAEA)は、原子力の軍事利用に目を光らせ「平和、保健及び繁栄に対する原子力の貢献を促進」(憲章)するのが目的。IAEAの役割を持ち出すまでもなく、原子力技術の開発は今や人類文明の発展に欠かせない。
ところが、わが国は原子力発電所の再稼働が思うように進まない上、もう一つの大きな懸念材料として定まらない原子力開発の行方がある。政府は、フランスとの共同研究で活路を見いだそうとしていたが、フランス側が中止を決めた。
それがフランスの高速実証炉「アストリッド」の建設計画。廃炉が決まった高速増殖原型炉「もんじゅ」に代わる次世代原子炉建設のために当てにした技術だ。フランス側の「開発の緊急性がない」という声は以前から聞こえてはいたが、その中止決定は日本側に大きな痛手だ。
先端科学技術としての原子力は①がんなどの医療分野の放射線応用や、バイオ領域の創薬②ビッグバン宇宙、元素創成の解明③原子や原子核のレベルでの研究開発――などがある(藤家洋一著『原子力 総合科学技術への道』)。
その成果が工学へ橋渡しされ「自ら整合性ある原子力システム」が生まれる。藤家氏は、このシステムにはエネルギー開発の展望が必須で、その対象が高速増殖炉だと見る。
核保有国は、絶えず核兵器の性能に磨きをかけるのに心を砕いている。わが国にはそれができないが、胸を張って原子力の平和利用を推進すべきだ。