北、昨年10月南と秘密接触 米攻撃恐れ平昌五輪参加を打診


文政権、「融和」演出手助け

 北朝鮮は昨年10月、米国による軍事攻撃を回避するため中国で韓国と秘密接触をし、武力挑発を自制し「融和」を演出するきっかけとして今年2月の平昌冬季五輪に参加する意向を伝えていたことが分かった。南北関係筋が20日、本紙に明らかにした。

 同筋によると、北朝鮮の朝鮮労働党内部で昨年10月、トランプ米政権による北朝鮮への軍事攻撃に対する危機感が高まり、対応策を協議するため韓国に秘密裏の接触を求め、在中国韓国公館に勤務する韓国のインテリジェンス・オフィサー(情報担当員)がこれに対応した。韓国側はハイレベルを含む非公式会談を数回重ね、最終的に北朝鮮側の意向を確認したという。

 北朝鮮は今年1月1日に金正恩朝鮮労働党委員長が新年辞で平昌五輪参加の意思を初めて表明。これを韓国・文在寅政権が歓迎し、その後に南北融和の流れが加速したと思われていたが、実際は昨年の時点で韓国は北朝鮮の五輪参加を了承していたことになる。

 北朝鮮は昨年9月、「水爆」と称し6回目の核実験を強行。11月には「火星15号」という名の長距離弾道ミサイルを発射し、「核弾頭の搭載が可能」になったとして「国家核戦力の完成」を宣布していた。

 韓国は日米両国と共に北朝鮮の脅威に対抗するため圧力を最大限に高めることで一致したが、一方で水面下で対北融和政策を進め、北朝鮮の「融和」演出を手助けしていた形だ。

 平昌五輪後、金委員長は4月、5月の2度にわたる南北首脳会談を経て6月には史上初の米朝首脳会談にこぎつけ、トランプ大統領から「安全の保証」を取り付けた。しかし、共同声明に盛り込まれたはずの「朝鮮半島の完全な非核化」はその後進展せず、逆に各種の核開発が続行されている事実が浮き彫りになっている。

 南北は新年辞の約1週間後に高位級会談を開催したのを皮切りに異例のスピードで各種会談を重ねた。これも韓国が事前に北朝鮮の意向をくんで準備していたため可能だったとみられる。

(ソウル上田勇実)