左翼系教職員組合にメス 韓国政府

 親北反米の偏向的理念教育を現場に持ち込むことで知られる韓国の全国教職員労働組合(全教組)に対し、このほど政府が「法外労組」を通告した。補助金打ち切りなどの憂き目に遭う全教組は反発しているが、弱体化は避けられないとの見方も出ている。
(ソウル・上田勇実)

「法外労組」通告、弱体化必至か

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24日、「法外労組」を通告する韓国雇用労働省の公文が張られたソウルの全教組事務所=韓国紙セゲイルボ提供

 韓国雇用労働省は先週、全教組に対し法的に認知した労働組合ではない、いわゆる「法外労組」であることを通告した。全教組には解雇された教職員を労組の組合員と認める規定があり、彼らを政策研究局長など全教組の中核メンバーとして迎え入れているが、現行の労働組合法などでは解雇された教職員の労組加入は認められていない。

 政府は、この問題に引っ掛かる全教組に対し、数年間にわたり是正勧告をしてきたが、頑としてこれを受け入れなかったため、今回の措置に踏み切ったという。

 「法外労組」に“格下げ”された場合、全教組は今後、教育当局との団体協約交渉権を失うため教育行政との距離が遠くなる。また、事務所賃貸料など政府からの補助金を打ち切られ、組合員の給与から天引きされてきた組合費の源泉徴収ができなくなり、財政的にも打撃を受けるとみられている。

 政府による「全教組たたき」とも受け止められる今回の措置は、全教組の偏向的理念教育にその原因がありそうだ。

 例えば、最近ではこんなニュースがある。北朝鮮の金日成主席の神格化に使われるパルチザン(日本による植民地支配に抗する非正規軍)の追悼前夜祭に中学生とその父兄180人を引率し、パルチザンを称賛する発言を聞かせた容疑(国家保安法違反)で、全教組所属の現職教師が逮捕・起訴された事件で、検察当局は裁判中にもかかわらずインターネット上に北朝鮮を称賛する文章を書いたとして、この教師を再逮捕・起訴した。

 またある市民団体の調査によると、全国の小中高80校を対象に図書館に所蔵されている韓国現代史に登場する主要人物に関する書籍を分析した結果、労働運動を象徴する全泰壹氏に関する本が高度経済成長を牽引した朴正熙元大統領の本よりも多く、建国の父・李承晩元大統領よりも金日成主席に関する本が多かった。こうした現象は全教組所属の教師たちによる意図的な図書選別が影響しているという。

 朴槿恵大統領自身、全教組と戦い続けてきた。2006年末、左派系与党・開かれたウリ党(当時)によって強行採決された「私立学校法改正案」が全教組の私学全体への影響力拡大につながるとして、保守系野党ハンナラ党の代表(当時)として反対運動の先頭に立ったことがある。

 03年の全盛期には10万人近かった全教組の組合員数も今や6万人を切り、金大中政権時に合法化された1999年当時の勢力さえ下回り、「法外労組」通告でさらなる弱体化は避けられないとの見方も出ている。

 ただ、全教組はもちろん左派系の野党やマスコミ、自治体教育行政トップの教育監の一部まで一斉に反発し、全教組の活動がさらに過激化する可能性もある。高等学校歴史教科書の左傾化問題と共に、全教組の行方は朴政権を悩ませるだろう。