朴政権、支持率下落の一途

「意思疎通不足」頭痛の種に

 韓国・朴槿恵政権の支持率下落に歯止めが掛からず、任期折り返しを前に早くもレームダック(死に体)化しているとの指摘が出ている。不支持の最大の理由は周囲や国民との疎通不足とみられており、今後、多くの国民が期待する景気回復に失敗した場合、さらに厳しい国政運営も予想される。(ソウル・上田勇実)

「セウォル号」対応など逆風続き

韓国紙「孤独な女王」/景気回復失敗ならさらに苦境

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1月26日、青瓦台で行われた首席秘書官会議を主催した朴大統領(中央)=韓国大統領府提供

 世論調査機関リアル・メーターが1月27日に実施した調査によると、朴大統領の国政運営に対する肯定的評価は29・7%にとどまり、一方の否定的評価は62・2%に達した。朴大統領の支持率が30%を割り込むのは就任以来初めてのことで、地元メディアは「早期レームダックの危機に陥った形」と指摘した。

 このところ朴大統領の支持率は下落の一途をたどっている。特に昨年末、韓国紙セゲイルボの記事を発端に波紋が広がった朴大統領の元側近による国政介入疑惑は、疑惑の根拠となる青瓦台(大統領府)内部文書の内容について捜査当局が「虚偽」と結論を下したにもかかわらず、逆にこれまで朴大統領に付きまとっていた「密室政治」「疎通不足」のイメージをさらに強くさせてしまったようだ。

 実際、不支持の理由を見ると、韓国ギャラップが1月20日から3日間実施した世論調査の場合、「疎通不足」(17%)が最も多かった。また朴大統領の最大支持地盤である南東部の大邱・慶尚北道で一時、不支持が支持を上回ったり、保守の牙城であるはずの釜山・慶尚南道で不支持が支持の2倍にも達するなど、これまで朴大統領を支えてきた基盤が揺らぎ始めているという点で状況は危機的とも言える。

 朴大統領は1月12日、新年の記者会見に臨み、施政方針を明らかにしたばかりだった。朴大統領は会見で「私は大統領就任後、ひたすら国民の皆さんと大韓民国の将来のためのみ最善を尽くしてきた。これからも残る任期の間、国民と国のために全てをささげる」と述べた。私心のない献身的な姿勢をアピールしていただけに、支持率下落で朴大統領の意気込みが空回りした感は否めない。

 朴大統領は会見で、自身最大のウイークポイントである「疎通不足」について「(就任後の)2年間、民生現場や政策現場に直接行き、本当に腹を割って話を聞いたり、こちらの考えも伝えたりした。青瓦台でも各界各層の国民たちを招いて話を聞き、本当にそういうことを活発にやった」と述べ、それなりに努力してきたことを強調したが、世論調査を見る限りでは国民の目には不十分と映っているようだ。

 支持率下落に歯止めが掛からず、レームダック化が現実味を帯び始めたことを受け、メディアからは手厳しい批判が相次いでいる。主要紙・中央日報は社説で「大統領は奥深い宮中のような本館で側近の秘書官2人だけを従えて執務に当たる“孤独な女王”。その後、(執務が終われば)ガランとして寂しい官邸に戻る」「秘書室長や首席秘書官たちが勤務する秘書室は、大統領執務室から500㍍も離れている。(中略)こういう構造で面と向かって報告することが簡単だろうか」と指摘した。

 また最大手の朝鮮日報も社説で、朴大統領の支持率が歴代大統領の就任後の同じような時点における支持率――金大中(49%)、李明博(44%)、金泳三(37%)――より低く、親北反米路線をはじめ国内外にさまざまな物議を醸した、あの盧武鉉大統領の33%にすら及ばないことを嘆いている。

 就任1年目は高い支持率を維持した朴大統領だったが、昨年は4月に起きた旅客船「セウォル号」沈没事故に対する政府としての不手際や年末の元側近による国政介入疑惑など逆風下に置かれ、あっという間に20%台まで下落してしまった。

 朴大統領としては大きな国政選挙がない今年が腰を据えて仕事ができるチャンスだ。新年の記者会見でも強調していたが、景気回復が最大の課題だろう。公共・労働・金融・教育の4大部門における非効率な構造を是正して競争力をアップさせる方針を掲げているが、既得権者の抵抗が予想される。景気浮揚に失敗し、庶民が景気回復を肌で感じることができなければ、支持率のさらなる低下は必至だ。

 韓国歴代政権はしばしば南北関係を政権浮揚の手段に利用してきたが、朴大統領がこうした手段を選択するかどうかも関心の的だ。朴大統領は政治的ショーを嫌い、原則や実利を重んじる政治家として知られるが、北朝鮮の最高指導者・金正第1書記との首脳会談が南北関係改善に役立つと判断すれば、可能性は十分ある。