過激デモに極左野党の影-韓国
08年“狂牛病”集会に介入
内乱扇動・陰謀罪などで逮捕・起訴され、大きな波紋を呼んだ韓国の李石基議員が所属する極左野党・統合進歩党が、過激デモを扇動してきた事実が明らかになった。韓国のデモを背後で操り、保守政権に退陣を求めた核心グループの実態が垣間見えてきた。
(ソウル・上田勇実、写真も)
17年大統領選勝利へ発破
韓国検察当局によると、進歩党の主流派をなし、今回の李議員をめぐる事件で明るみになった地下組織R・Oは、北朝鮮が休戦協定白紙化を宣言した今年3月、メンバーたちに「大衆を動員して狂牛病騒ぎのように宣伝戦を実施せよ」という指示を出していたことが明らかになった。
「狂牛病騒ぎ」とは2008年春、米国産牛肉輸入再開を断行しようとした李明博政権に対し、「米国牛を食べると狂牛病にかかる恐れがある」とする報道をきっかけに広まった政権退陣デモのことだ。
多いときで数万人に達する人がろうそくを手にしてデモに参加したが、デモの背後には扇動勢力がいるはず、との見方が当初からあった。
検察によると、実際、08年5月から「狂牛病国民対策会議」の共同状況室長を務め、各種暴力デモを主導した容疑で同年11月に逮捕・起訴されたのは、今年5月に秘密裏に開かれたR・Oの会合に出席したメンバーだったことが分かった。
また別のR・Oメンバーが、狂牛病騒ぎ以外にも京畿道平沢市への米軍基地移転反対や整理解雇問題で揺れた双竜自動車の労組運動などに「集中せよ」との指示を受け、これらの集会に何度か参加したことも分かっている。
こうした過激デモ扇動の理論的根拠について、李議員は昨年5月、進歩党の基本戦略として「労働階級としてのアイデンティティーを強化し、労働者や農民の支持基盤を回復させる」と発言したという。
その先にあるシナリオは「過激デモ↓保守政権退陣の世論造成↓進歩勢力への政権交代」というもので、李議員は昨年8月のR・O集会で、来年の地方選挙と16年の総選挙で「野党第1党」に躍進し、17年の大統領選では「進歩政権時代の序幕を開けよう」と発破を掛けていた。
一方、同党は最近、国が電力不足解消の手段として南東部の密陽で進めようとしている送電鉄塔建設に反対する地元住民のデモにも加勢している。一部報道によると、同党の党員は建設現場に地元住民と対峙する警察官たちを捕まえるわなまで準備したという。
過激デモ扇動などを通じ“目的”を達成しようというR・Oの勢力は、前身の地下組織・民族民主革命党(民革党)が700人~最大2000人だったとされることから、ほぼ同じ規模だとする見方が出ている。過去の歴史上の左翼革命を鑑みて「社会に影響を与える上で十分な人数」だとする専門家もいる。
ただ、ある元民革党幹部は「現在の地下組織はエリートの質が低下し、大衆伝播力も弱いため、それほど脅威にはならない」と指摘している。






