金第1書記、拉致被害者・家族の監視強化指示

 韓国の脱北者団体「NK知識人連帯」によると、北朝鮮は日本人拉致問題をめぐり、朝鮮労働党組織指導部が9月初めに被害者とその家族の監視を一層厳重にする方針を最高指導者の金正恩第1書記に報告したことを受け、金第1書記は監視態勢強化を指示した。(ソウル上田勇実)

組織指導部が管理、外部接触を警戒

特定失踪者調査にも消極的か

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7月1日、北京の北朝鮮大使館で始まった日朝局長級協議(時事)

 金第1書記は指示の中で「いかなる場合も極秘にしている日本人拉致被害者たちとその家族のことが外部に漏れることがないように」と強調。①被害者管理を管轄組織と国家安全保衛部に任せず、組織指導部が直接行う②毎日のごとく被害者と家族の動きを報告し、外部と接触させないよう注意を払う③被害者と家族の一部始終を把握し、万が一異変があれば即刻対応できるよう特別管理に入る――ことを命じたという。

 組織指導部による報告では、平壌市内の複数区域に分散して居住している日本人拉致被害者の生活費に対する管理を区域の組織から国家安全保衛部に移管させるほか、被害者の子供が通う学校に監視要員を直接送り、尾行させるなどの内容が盛り込まれた。

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北朝鮮の金元弘国家安全保衛部長(左)と黄炳瑞軍総政治局長(朝鮮通信時事)

 こうした拉致被害者・家族に対する監視が可能なのは、極度に限られた場所で仕事や生活をしているためとみられる。同連帯は月例ブリーフィングの資料で、「拉致被害者たちは党の組織などに雇用され、極秘の業務に従事する場合が多い上、被害者の子供も家庭の真相について外部に絶対明かさないという誓約を強要される」と指摘した。

 一方、組織指導部は今年7月、日本政府が求める拉致被害者の再調査と関連し全国に指導員を派遣したが、北朝鮮に帰化した日本人など数家庭を訪問したにとどまったという。日本政府が認定する拉致被害者はこれまでも特別な監視下に置かれてきたとされ、再調査するまでもないが、それ以外の拉致被害の疑いが持たれている特定失踪者などへの本格的な調査に北朝鮮が消極的である可能性が出ている。