訪米の朴大統領待ち構え非難
韓国で海外過激デモに懸念の声
ニューヨークで開かれている国連総会出席のためカナダ、米国を歴訪中の韓国の朴槿恵大統領に対し、現地の在留韓国人の一部が連日デモを行い、本国識者たちのひんしゅくを買っている。場所をわきまえない海外でのデモは、国の品格失墜につながりかねない。(ソウル・上田勇実)
「国の恥さらし」自制促す識者
韓国メディアが伝えたところによると、「セウォル号を記憶するカナダの人たち」など現地韓国系団体は、朴大統領がカナダに到着した20日(現地時間)から「セウォル号特別法制定」を求め、朴政権を糾弾するデモを朴大統領の公式日程が組まれているオタワ市内のホテルをはじめ数カ所で同時多発的に行った。
これは今年4月、南西部沖で沈没した旅客船「セウォル号」の事故で犠牲になった高校生たちの父兄が、捜査当局が発表した内容を信用せず、遺族の意見が反映された組織に捜査権・起訴権を与えるべきだとしている問題で、朴大統領がこれを拒否したことに反発したものだ。
しかし、遺族たちは「これ以上何か新たに出てきそうもないのに捜査権・起訴権をよこせと言い、それでいて何が疑問なのか明確に示さない」(朝鮮日報)ため、デモには説得力がないとの見方もある。
デモは翌21日、ニューヨークにある韓国総領事館前でも行われた。「セウォル号を忘れないニューヨークのママたち」と称する団体をはじめとする参加者たちは、声明文で「国政の最高責任者としてセウォル号問題を解決する意志がない朴大統領は、数百人の子供たちの死に責任がある」と指摘。周囲を行進した。
この際、特に問題となったのはデモで飛び出した過激な大統領非難の数々だ。「朴槿恵OUT(退陣)」と叫んだのはもとより、朴大統領を「殺人魔」と非難したり、「慶祝、飛行機墜落、即死」と、朴大統領が飛行機事故に遭うかのごとく呪い文句を記したプラカードまで登場したという。
さらに現地の在留韓国人たちは、今年5月、8月に続き、今回の朴大統領訪米に合わせ、ニューヨーク・タイムズ紙に沈没事故をめぐり朴大統領に責任を問う内容の全面意見広告を出すための募金キャンペーンを展開し、今月15日現在で1500人以上から目標額を突破する約6万2000㌦を集めた。
海外で行われた韓国人自らによる一連の「朴槿恵たたき」を、現地の国民はどう思っているだろうか。デモ好きな国民性に驚いただけでなく、外国人の目に韓国人がどう映るのかという冷静な発想を欠き、海外で自国の国家元首を卑下する行為には、ただ苦笑するしかなかったかもしれない。
さすがにこの事態に韓国でも識者を中心に「国の恥さらしだ」「表現の自由の許容範囲を越えている」といった声が相次ぎ、自制を促している。
自分たちの主張を利害関係のない外国で訴えるというやり方は、いわゆる従軍慰安婦の少女像を米国で建立する動きにも通じる。国際的な関心や同情心を買い、“張本人”に恥をかかせ、反省を促す効果を狙ったものだが、弱者や被害者の論理だけを押し通そうとするあまり、国際的な常識から見るとバランスを欠く印象を与えることもしばしばある。






