韓国で「イクメン」急増中

「男は外、女は家」は古い?

妻の社会進出で夫が育児

 女性の社会進出が著しい近年の韓国で、育児に積極的に関わる父親が増えている。儒教精神が浸透するこの国のかつての父親像からは想像しにくいが、育児を楽しむパパたちも少なくないようで、ちょっとした“意識革命”と言えるかもしれない。(ソウル・上田勇実)

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韓国では近年、父親の育児参加が増えている。写真は5日、秋夕(旧盆)で故郷に帰る家族=韓国紙セゲイルボ提供

 今、子育てを積極的に楽しむパパが「イケメン」ならぬ「イクメン」と呼ばれ注目されています――。

 これは父親の育児休業を応援するという厚生労働省ホームページにあるキャッチフレーズだが、社会・経済現象の“日本追い”が何かと多い韓国で、この「イクメン」が増えているという。

 韓国紙・中央日報電子版はこのほど、韓国で増加する育児パパの現状を伝えた。記事は30代前半の育児パパ、カン・ビョングさんの1日を次のように紹介している。

 「朝6時半に起きて朝ご飯の準備をし、8時に2歳半になる息子を起こして9時半までに保育園に送る。その後、家に戻って皿洗い、掃除、洗濯、おかずの下ごしらえなどをすると、もう昼すぎ。ようやく休憩が取れるかと思いきや大学院の博士課程に進むための勉強に勤しんでいる」

 「午後4時半になると保育園に息子を迎えに行く。その足で近くの駅舎へ行って息子が好きな電車を見に行く。その後、スーパーで夕ご飯の食材を買い、6時半には息子と2人で夕食を取る。10時に床に入る息子に童話の本を読んで聞かせながら寝かせる」

 カンさんが仕事を辞めて育児と家事を全面的に担当するようになったのは、息子が生まれた後、妻が産休明けで職場に復帰する時だったという。

 記事はこうした育児パパの登場についてこう解説している。

 「男は外、女は家の中という役割観念はもう昔のこと。社会活動がもたらす幸福感と育児がもたらす幸福感を夫と妻のどちらか一方にのみ与える必要はないし、それに伴う責任と苦労もまたどちらか一方に与える必要もない」

 育児パパ増加の背景にあるのは女性の社会進出だ。いまだに会社員などの男女間の賃金格差は厳然と存在する一方、頭角を現す女性たちも増えてきた。昨年の外務公務員採用試験(国家公務員採用試験に相当)の最終合格者37人のうち女性は過去最高の60%に当たる22人だった。また弁護士や医者などの専門職だけでなく、会社の経営者や管理職などでも女性の活躍が随分と伝えられるようになった。何より女性大統領まで誕生している。

 こうしたご時世を反映し、テレビでも育児パパを扱う番組が人気だ。KBSが昨年からスタートさせた日曜放映の「スーパーマンが帰ってきた」は、妻の助けなしに家で子供の面倒を見る芸能人パパたちの奮闘ぶりを追っている。

 レギュラー出演には、かつて柔道日本代表でもあった在日韓国人出身の秋成勲(日本名・秋山成勲)氏もいる。ファッションモデルの妻に代わって娘と一緒に1日を過ごす様子は、視聴者の笑いと涙を誘っている。

 育児パパの増加と関連し、パパたちに育児休業を与えるべきだとする運動も起こり、現在、ソウルで100万人を目標にした署名活動が行われている。