韓国・朴大統領就任1年、対日関係改善見えず
韓国の朴槿恵大統領が就任して25日で1年。世論調査では外交・安保の成果が評価されて支持率は50%を超え、民主化以降では歴代政権2位の高さというが、これとは対照的に対日関係の悪化は目に余るものがあり、今後の見通しも立っていない。なぜここまで関係がこじれてしまったのだろうか。(ソウル・上田勇実)
課題の「疎通不足」ネックに
朴政権1年の日韓関係については「過去最悪」という評価が多い。韓国では「極右政治家アベ」の「挑発が続いた」ためだという認識をマスコミが拡散しており、政府高官も頑(かたく)なな朴大統領の顔色をうかがうかのようにほぼ所信もなく反日発言を繰り返した。朴政権のブレーンの中には「この際、アベ抜きで日韓関係を」と平気で言いだす人もいるくらいで、「アベ=極右=日韓関係悪化の根源」という思考回路から抜け出す気配はなかなか見えてこない。
戦後、日韓関係悪化という歴史は何度も繰り返されてきたが、朴政権1年の特徴は日本側で嫌韓感情がかなり広がったことだ。韓国マスコミの東京特派員たちは日本の嫌韓感情を積極的に紹介しているので、韓国の国民も日本の実情を少しは知っているはずだが、「なぜ韓国が嫌われるのか」という客観的分析につながらないところがいかにも韓国的だ。
韓国ではもっぱら「アベの挑発」が全ての原因であるかのような世論が支配的で、自分たちが熱心に取り組む第三国での日本批判や中国接近路線による対日圧力などがもたらす副作用には無頓着だが、実は韓国自身による朴大統領分析を見ると興味深いことが浮かび上がる。朴大統領の泣き所とされる「疎通不足」が対日政策にも通じると思われるのだ。
韓国紙・朝鮮日報の24日付社説にはこんなくだりが出てくる。
「朴大統領は(自分が)『疎通不足』だという指摘にあまり同意していない。原則を曲げる妥協や状況悪化を招くのが目に見えているのに会うのは困るという大統領の言葉にも一理ある。だが、朴大統領が原則を守る妥協、状況改善を引き出す会談のためにできるあらゆる努力を傾けたかは疑問だ」
これは就任1年を迎えた朴大統領に対する苦言として、韓国の国民や野党との疎通不足を指摘したものだが、日本に対する姿勢にも同じことが言えるのではないか。対話の扉はいつでも開かれているとして首脳会談を呼び掛ける安倍晋三首相に対し、朴大統領は会談後の結果ばかりを気にして、会談に前提条件を付けている。自分が決めた原則にこだわるあまり疎通不足になり、それがネックになっているという指摘は、そのまま対日政策にも当てはまるものだ。
また対日関係悪化は、朴大統領の人となりと無関係ではないと思われるエピソードもある。新年の記者会見で「仕事を終えた後は何をしているか。報告書を読んだり、報告を受けているという答え以外に答えてほしい」という質問に朴大統領は「実は報告書を読んだり、報告を受けるのにほとんどの時間を割いている」と答えた。仕事に対する熱意より、遊び心や柔軟性に欠ける“堅物”という印象を与えるのに十分なやりとりだった。
ただ、その頑なさが功を奏し、及第点をもらっているのが対北朝鮮政策だ。北朝鮮がどんなに威嚇し、挑発しても原則や約束を北朝鮮が守らなければ妥協しない。結局は開城工業団地の操業再開や離散家族再会実施など北朝鮮側の譲歩を引き出すことに成功している。