韓国で過去最悪の個人情報流出 信用カード3社顧客1億件

 韓国でクレジットカード大手3社の顧客情報延べ1億件余りが流出し、大騒ぎになっている。氏名、住所、電話番号、住民登録番号、カードの番号や有効期限など流出内容は21項目に及び、これを悪用した金融詐欺など二次被害の恐れも出ている。
(ソウル・上田勇実)

情報売買する「市場」野放し

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過去最悪の個人情報流出事件を起こし、記者会見で謝罪する韓国カード大手3社の役員ら(20日、ソウル市内)=韓国紙セゲイルボ提供

 今回の個人情報流出事件を捜査した昌原(韓国慶尚南道)地方検察庁によると、クレジットカード大手のKBカード(国民銀行系)、ロッテカード、NHカード(NH農協銀行系)の3社が管理していた顧客約1億件分が流出したのは2012年10月から昨年12月にかけてのこと。

 3社に出入りしていたカード管理システムプログラムを担当する外部専門会社の30代職員が、所持していたUSBメモリーに顧客の個人情報を違法にコピーして持ち出し、その一部を融資広告業者などに売っていたことが判明、同地検は今月8日、この職員を起訴したと明らかにした。

 地検が発表した当初はそれほど関心を集めなかったが、その後、顧客らが個人情報流出の有無を確認したところ、個々人の流出内容が予想以上に広範囲であることが分かり、事態の深刻さに驚いた金融当局が急遽(きゅうきょ)記者会見を開き、クローズアップされるようになった。

 一つの事件で1億件余り、人数にして約1500万人相当の個人情報が流出したのは韓国で過去最悪。3社には心当たりのある顧客によるカードの停止・解約・再発行などを求める問い合わせの電話や営業店への訪問が殺到し、「精神的被害を受けた」などとして1億ウォン(約1000万円)の損害賠償を求める集団訴訟の動きもみられる。

 騒ぎが大きくなったことで3社の経営陣らはそろって「辞職会見」を開く一方、事態を重く見た政府は個人情報流出に対する刑事処罰の大幅強化や該当カード社への懲罰課徴金など再発防止に向けた対応策を検討し始めた。

 韓国メディアは、今回の事件の背景にある問題点として、融資勧誘などを目的にして流出した個人情報が取引される「『市場』が野放しにされている」ことを挙げている。融資・カードの勧誘員は全国で20万人に達し、こうした「市場」を通じ情報1件当たり数万ウォン~数百万ウォンで売買されるという。

 携帯電話を所持している人なら、低利貸し付けの文句でいきなり電話や文字メッセージを送り付けられてきた経験は誰でもあるといわれるほど韓国は融資勧誘が頻繁に行われているが、「実績主義に走る金融機関がこうした状況を黙認していることも問題」と指摘されている。

 また近年、韓国金融機関でも持ち株会社体制が増え、系列社同士で顧客情報を共有していることが多く、こうした場合、どこか1社の顧客情報が漏れた場合、系列他社の顧客情報まで被害が及ぶ可能性がある時代になっている。

 被害に遭った顧客らは、流出した自分の個人情報が金融詐欺などに悪用される二次被害を恐れており、しばらく動揺は続きそうだ。