くすんだ政権の「中間評価」、対日改善も見込めず
解説
文在寅政権に対する中間評価の性格を帯びていた今回の韓国総選挙で革新系の与党、共に民主党が勝利を収められたのは新型コロナウイルスの感染拡大という非常事態の中、政権審判論が大きく後退した影響によるものとみられる。
保守系の最大野党、未来統合党は文政権による失敗続きの経済政策や日本をはじめ周辺国との関係を悪化させた外交などの失政を強く批判し、有権者に政府・与党審判の必要性を訴えたが、思うように届かなかった。それ以上に欧米諸国と比べ国内ではコロナ危機をある程度抑え込んでいることが政府・与党に追い風となったようだ。
特に勝敗を左右する浮動層有権者がコロナ危機とその対応に目を奪われた感は否めず、冷静に中間評価を下せたかは疑問だ。
与党は比例代表を含め単独過半数を確保した上、青瓦台(大統領府)出身者や親北反米の学生運動に傾倒したメンバーが何人も当選を果たした。今後、国会内に「強力な文在寅親衛隊」(韓国大手紙論説委員)が作られ、文氏擁護が目的とも言われる検察改革などを強引に推し進める可能性がある。
日本との関係悪化はしばらく続く公算が大きい。カギを握るのは元徴用工判決でつくり出された国際法違反の状態を韓国政府が是正できるかだが、国内向けに論点をずらし「反日」路線に固執することも予想され、関係改善の道のりは見通せない。
政府・与党は今回の勝利で再来年の大統領選に弾みをつけたとの見方もある。ただ、低迷する経済の立て直しに失敗すれば政権審判論が再び浮上するだろう。コロナ危機が収束に向かい国民が落ち着きを取り戻せば、政府・与党に厳しい目が向けられる可能性がある。
(編集委員・上田勇実)