独社民党が大敗、政権も危機―欧州議会選


大連立解消の観測も

 欧州連合(EU)加盟国28カ国で26日まで行われた欧州議会選挙で、これまで過半数を占めてきた「欧州人民党」(EPP)と「欧州社会・進歩連盟」(S&D)の2会派は議席を大きく減らし、欧州懐疑派、ポピュリズム派政党が躍進したが、特にEUの盟主ドイツの社会民主党の後退は深刻で、メルケル連立政権の屋台骨を揺るがす結果となった。
 
 ドイツの欧州議会選で社民党の得票率は15・8%と、前回(2014年)比11・5ポイント減となり、大幅に得票率を落とした。一方、同日行われた北部ブレーメン州議会選挙でも、戦後から確保してきた第1党の地位をキリスト教民主同盟(CDU)に奪われ、敗北が重なった。

 社民党以外の欧州議会選結果(得票率)は、CDU28・9%(6・4ポイント減)、緑の党20・5%(9・8ポイント増)、左翼党5・5%(1・9ポイント減)、「ドイツのための選択肢」(AfD)11%(3・9ポイント増)、自由民主党(FDP)5・4%(2ポイント増)―だった。

 このところ社民党は、連邦選挙を含む各選挙で支持を失ってきた。欧州議会議長を5年務めてきた希望の星、シュルツ氏が党首に選出されても低迷傾向にストップをかけるどころか、さらに悪化させて1年余りで党首ポストをナーレス現党首に譲った。

 しかし、ナーレス氏も党の低迷を止めることはできず、昨年10月14日のバイエル州議会選では第5党となり、AfDの後塵(こうじん)を拝した。連邦議会選後、社民党は下野する方針だったが、結局、メルケル首相の誘いに乗って大連立を組み与党になった経緯がある。

 今回の選挙の結果、社民党内から大連立解消を要求する声が出ている。同時に、ナーレス党首の責任論が噴出するのは必至で、シュルツ前党首らがナーレス党首降ろしを画策しているといった“党内クーデター説”すら流れている。

 また、党に期待が持てないためか、党幹部のガブリエル前外相が25日、政界引退を表明した。同党では党内青年社会主義者グループのキューナルト連邦議長が週刊誌「ツァイト」とのインタビューで、不動産の私有禁止、大企業の国営化など「大企業の集産化」を提案しており、路線対立が先鋭化している。

 社民党がCDU・CSUとの大連立から離脱すれば、第4次メルケル連立政権は退陣に追い込まれ、2021年の任期満了まで首相を務めると表明してきたメルケル首相自身の首相ポストが危うくなる。

 昨年12月のCDU党大会でメルケル首相の後継者に選出されたクランプカレンバウアー党首は、メルケル色を払拭(ふっしょく)しながら独自の政策を模索してきたが、存在感を示し得ていない。一方、社民党は党内で政策不一致が目立ち、新味に欠け、結党以来、最も厳しい状況に直面している。

(ウィーン 小川敏)