国連職員食堂も閑散


地球だより

 世界のイスラム教国で今年もラマダン(断食の月)が始まった。ラマダンが始まると当方が日ごろお世話になっている国連の職員レストランでは昼食を取る職員が減る。イスラム教徒の職員が食事をしないからだ。「ああ、ラマダンが始まったのだな」といった感慨が湧いてくる。

 ラマダンはイスラム教徒が死守しなければならない五つの義務の一つだが、断食しなくてもいい信者もいる。妊婦や子供はしなくていい。定期的に薬を摂取しているイスラム教徒、海外に旅行中の信徒も断食しなくてもいい、といった具合だ。何らかの理由で断食ができない人はその代わりに貧しい人に献金する。

 ラマダンはちょうど、キリスト教信者のクリスマスと似ている。キリスト教信者がクリスマス・シーズンになると日ごろ疎遠になっていた教会へ足を延ばし、ミサに参加する。同じように、ラマダンが到来すると「イスラム教徒は信仰的になる」という。友人を断食明けの食事に招待して交流するイスラム教徒の家庭が多い。独身のイスラム教徒の場合、ラマダンが到来すると、多くの家庭から招待状が届く。だから、自宅でわびしく食事をする必要はない。友人から招きがない場合、夜9時、最寄りのイスラム寺院に行けば、日没後の食事(イフタール)が待っている。会員証や信者証明書など見せる必要はない。誰でも食事ができる。キリスト教信者でも無神論者でもいい。「全てウェルカムだ」という。この点、イスラム教はキリスト教より懐が深い。

 イスラム教徒の友人は「ラマダンで注意しなければならない点は食べ過ぎで太らないことだ」という。日没後の食事のためにイスラム教徒の女性たちは買い物に汗を流し、さまざまな料理を準備する。豪華な夕食をラマダン期間の30日間、満喫すれば、「多くの信者たちは太る」というのだ。ラマダン後、5キロ太ったという男性はざらにいる。断食しながら、体重が増えるといった奇妙な現象が見られるわけだ。

 当方も過去、何度か日没後の食事に招かれたことがある。イスラム教徒たちは夜遅くまで談笑しながら食べる。朝食と昼食を食べていないので、食欲は当然ある。どうしても食べ過ぎてしまうわけだ。

(O)