スポーツ用多目的車SUV、街乗り派にも人気
相次ぎ新型車、海外に照準
1990年代に人気となったスポーツ用多目的車(SUV)が国内市場で再び盛り上がりを見せている。トヨタ自動車など国内メーカーが相次ぎ新型車を投入。悪路や雪道だけでなく市街地での走行も意識した「クロスオーバー」と呼ばれるタイプで、アウトドア派に限らず街乗り派にも人気だ。メーカーには海外で拡大するSUVの需要を取り込みたいとの思惑もある。
昨年12月の1カ月間にトヨタと日産自動車、ホンダの3社が新型SUVを発売した。円安効果による業績の急回復で「量販車だけでなく個性的な車を開発する余裕が出てきた」(大手メーカー幹部)ことも背景にある。
SUV市場では富士重工業や日産、マツダが先行している。日産は全面改良した新型「エクストレイル」で市場での地位を固めたい考え。簡単に駐車できるシステムなど市街地で便利な機能や先進の安全技術を搭載しつつ、部品の共通化でコストを抑え、価格を従来とほぼ同水準に据え置いた。日産の片桐隆夫副社長は「国内SUV市場を活性化させる一翼を担いたい」と語る。
ホンダは新型車「ヴェゼル」で、苦戦する国内SUV市場での躍進を目指す。SUVは先進国ではセダンなどに飽き足らず個性的な車を求める消費者に人気。インフラが整わない新興国では悪路での走行に優れたSUVの需要が高まっている。ホンダはヴェゼルを主力の「フィット」に続く世界展開用小型車の第2弾と位置付ける。
燃費性能も高くなっている。ヴェゼルのハイブリッド車(HV)は前輪駆動車でガソリン1リットル当たりの走行可能距離が27・0キロ。トヨタは10年ぶりに全面改良した「ハリアー」のHVモデルを今月15日に発売する。三菱自動車は家庭用電源で充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)のSUV「アウトランダーPHEV」の販売が好調。主力の「パジェロ」などでPHVシステムを搭載したSUVを増やす計画だ。
スズキは軽自動車のSUV「ハスラー」を今月8日に投入する。本田治副社長は「軽のクロスオーバーという新しい市場を開拓したい」と意気込む。