宮城の農協で、海岸防災林の復活に「コンテナ苗」


成長早くコスト減も、被災地で高まる期待

宮城の農協で、海岸防災林の復活に「コンテナ苗」

海岸林として植樹されたコンテナ苗の成長を確認する太田清蔵さん=12月12日、仙台市荒浜

 田畑や住宅を潮風から守り続けた懐かしい海岸の松林を復活させたい。東日本大震災で甚大な被害を受けた海岸防災林の再生に向け、丈夫で成長が早い「コンテナ苗」を使った植樹が宮城県で進められている。造林コストの低減を図る技術で、海外では一般的だが、国内ではまだ一部で生産が始まったばかり。全国に先駆け栽培を始めた生産者の存在が、新たな取り組みを後押しする。

 通常、松やスギなどの苗木は畑に種をまいて育てるが、この苗は直径約5センチ、深さ約10センチの穴が24個開いたコンテナで栽培する。林野庁によると、筒状に密集して張った根が養分を蓄えるため、植樹までの期間は約1年と従来の半分以下。真っすぐ伸びた主根が地中深くまで差さり、その後の成長が早いのも特徴だ。

 5年前からコンテナ苗を生産する宮城県農林種苗農業協同組合の太田清蔵組合長(83)は、造林に時間がかかり採算が合わないために放棄される林を減らしたいと、当時まだ知る人が少なかったコンテナ苗の導入を決断した。新しい生産手法への抵抗感や初期投資の負担から、導入に消極的な生産者も少なくないが、「これまででは考えられないほど成長が早い」と効果を強調する。

 震災後、太田さんらは土地のかさ上げ工事が終わった海岸に、防災林に適したクロマツのコンテナ苗100本を植えた。観察を続けると、従来の海岸林と比べ枯れにくく、根の強度も高いことが分かった。国と県は、10年間でクロマツの苗木約500万本を植樹する計画で、1年中植えることができるコンテナ苗に期待が高まる。