澤穂希が引退会見「心と体が一致しなくなった」
爽やかな表情で「最高のサッカー人生だった」
サッカー女子日本代表(なでしこジャパン)を長年引っ張り、16日に現役引退を発表した澤穂希(37)INAC神戸が17日、東京都内で記者会見を開き、引退の理由を「心と体が一致して、トップレベルで戦うのがだんだん難しくなってきた」と説明した。時折、声を詰まらせる場面もあったが、爽やかな表情で「悔いはない。最高のサッカー人生だった」と述べた。
澤は引退を考えた時期について、昨年から現役生活を続けるかどうか自問自答していたことを明かした。準優勝した今年のワールドカップ(W杯)カナダ大会終了後、「やり切ったと感じる瞬間があった。今年いっぱいかなと思っていた」と話した。家族には12月に入って決断を伝えたという。
最も印象に残っているのは2011年のワールドカップ(W杯)ドイツ大会の優勝。「日本女子サッカーの歴史を変えた日」と振り返った。引退後の活動については、具体的に決めていないとし「心と体を休ませて、サッカーはもちろん、澤穂希にしかできない仕事をやりたい」。今年8月に結婚したこともあり、「今後は夫婦らしい生活をできればいいと思う」と笑顔で語った。
現役最後の大会は皇后杯全日本選手権。19日の準々決勝で埼玉と対戦する。「残りの時間をINACの仲間と戦える。一緒にやれる喜びと寂しさを感じている」としんみりした様子で話した。
支えられた現役生活、後輩に「結果にこだわって」
澤が言葉を詰まらせたのは冒頭だけだった。「チームメートの顔を思い出した。苦しいときを一緒に過ごした仲間のことを思うと胸がいっぱい」。日本女子サッカー界の「レジェンド」は25年近い現役生活を穏やかに振り返った。
女子サッカーが注目されない不遇の時代から、日本代表を引っ張ってきた。一番、苦しかった時を聞かれ、2004年アテネ五輪の予選を挙げる。五輪出場が懸かる北朝鮮戦に膝のけがを抱えながら出場。ストレスから試合前にはじんましんも出たという。自身だけでなく、「今後の女子サッカーを考えると不安だった」。それでもリハビリ時から周囲の「大丈夫だよ」という言葉に支えられたという。
最高の思い出は11年のドイツW杯の優勝。米国との決勝で、延長後半に決めた同点ゴールが一番のプレーだと振り返った。優勝で自分たちを取り巻く環境も大きく変わった。それゆえに後輩たちへ伝えたいのは「伸び伸びやってほしいところもあるが、勝負、結果にこだわってほしい」。15歳から日本代表でプレーしてきたからこそ言える言葉だった。
「練習を100%でやるから試合でも出せた。けがなく1日サッカーをできるのが幸せだった」。W杯優勝に世界最優秀選手。多くの栄冠を手にした37歳は悔いなく現役生活を終える。