創薬の力、「人間は微生物にはかなわない」
大村智さん、「微生物が見直されるのが楽しみだ」
ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった大村智・北里大特別栄誉教授(80)は9日、時事通信社などのインタビューに応じ、熱帯で数億人を救った抗生物質「イベルメクチン」をつくり出した微生物の力について、「人間は微生物にはかなわない」と語った。
受賞が決定した5日夜の記者会見で、「微生物の力を借りているだけ」と謙虚に語った大村さん。微生物は砂糖を一晩でアルコールに変えるなど、「考えられないようなことをしている」と強調した。
大村さんは「今ある薬の過半数は微生物がつくった」と解説。微生物は感染症の薬をはじめ、脂質異常症の薬や抗がん剤などを生んできた。大村さんも、静岡県内の土壌に含まれていた放線菌がつくる物質の中から抗生物質を見つけ出した。
微生物を探し、生み出す化学物質の効果を見極めて薬にする創薬は時間がかかる。現在は石油などから膨大な化合物を合成し、薬の候補となる物質をコンピューターで見つけ出す手法が主流になった。
大村さんは主流の方法だけでは十分でないと指摘し、微生物の利用が「見直されるのが楽しみだ」と締めくくった。