広島大、ISSで再生医療実験を行うと発表


幹細胞、無重力で効率培養

広島大、ISSで再生医療実験を行うと発表

広島大のベンチャー企業が開発した、地上で微小重力環境を再現して幹細胞を培養する装置=25日、東京都港区の広島大東京オフィス

 広島大は25日、国際宇宙ステーション(ISS)の微小重力環境で効率的に培養した幹細胞を使った脊髄損傷治療の実験を行うと発表した。早ければ来年6月にもISSに試料を運び、約2週間培養した後にマウスに移植して効果を調べる。再生医療の実現には幹細胞の培養技術が不可欠で、宇宙と地上での実験を比較し、重力の影響などを詳しく調べる。

 広島大の弓削類教授らは、地上の約1000分の1の重力しかないISSでは、筋肉や骨の元になる幹細胞が分化せず、滞在中の飛行士の筋肉や骨の量が減少することに着目。逆に微小重力環境を利用し、あらゆる細胞に分化する能力(多能性)を維持したまま、幹細胞を増殖させることを思いついた。

 地上で微小重力環境を実現するため、細胞を入れた容器を360度常に回転させ重力の影響を打ち消す装置を開発。神経細胞に分化させやすい「間葉系幹細胞」と呼ばれる幹細胞の一種を装置で培養すると、多能性を維持したまま5倍から10倍に増殖できた。特殊な薬剤や遺伝子操作も不要で、臨床応用に向けた安全性が高いのが特徴という。

 米航空宇宙局(NASA)は今月2日、弓削教授らの実験計画を採択した。来年6月以降、間葉系幹細胞をISSに運んで培養。地上に回収後、脊髄損傷のマウスに移植する。地上でも装置で培養した幹細胞を移植し、両者の治療効果や細胞の特性などの違いを調べる。

 弓削教授は「微小重力を使った幹細胞培養技術が確立できれば、脊髄損傷などの画期的な治療法につながる」と話している。