求む!日本語教師、人材確保が深刻な課題
パラグアイの日系社会が曲がり角
南米パラグアイの日系社会が、曲がり角を迎えている。戦後移住が始まって半世紀が経過し、移民の熱意が支えてきた日本語学校の教員志望者が減少。中学を卒業したばかりの高校生を代用教員に採用するなどして急場をしのぐが、人材確保が深刻な課題となっている。
ブラジル国境近くで日本人や日系人約950人が暮らすイグアス移住地は、日本語が「公用語」だ。日系人の言葉はほぼ全員がよどみなく、子供たちからもきれいな日本語であいさつが返ってくる。のどかな田園風景が広がり、「ここを訪れた日本人からは『昭和の田舎のようだ』と言われます」と日本人会の比嘉正勝会長(50)は笑う。
イグアスのすべての日系人の子供が通う日本語学校の生徒数は、小学生と中学生の計119人。木造の校舎には「時間は守ります」「姿勢は正しくします」と書かれた日本語の張り紙。始業時には「起立、気をつけ、礼」と日直の掛け声が飛ぶ。「学ぶ日本語、大和魂」と歌う校歌は、規律を重んじる校風を物語る。
「日本語教育は、次世代への日本文化の継承につながる」と語る佃弥生校長(61)の悩みの種は「教員の確保」だ。移民社会の生活が豊かになるにつれ、多くの若者が首都アスンシオンなどへ進学。最近は日本式の厳しい教育方針に異論を挟む保護者も増えつつあるといい、「長続きしない教員も多い」ことも一因だ。
人口約1万人のイグアスで、日系社会は勤勉さで信頼を勝ち得てきた。だが、日本語の伝承が途絶えれば結束が消滅しかねないとの思いは強く、日本人会の福井一朗顧問(51)は「移住地の存亡に関わりかねない問題だ」と危機感を抱いている。(イグアスパラグアイ時事)