芥川賞に又吉直樹さんと羽田圭介さん
直木賞は東山彰良さん
第153回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が16日夕、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞はお笑いコンビ「ピース」で活躍する又吉直樹さん(35)の「火花」(文学界2月号)と、羽田圭介さん(29)の「スクラップ・アンド・ビルド」(文学界3月号)に決まった。直木賞は東山彰良さん(46)の「流」(講談社)が選ばれた。
又吉さんは初候補での受賞。作品は2人のお笑い芸人の友情と葛藤を描いた中編。天才的なセンスを持ちながら時流に乗れず、身を持ち崩す神谷と彼を慕う徳永が、さまざまな人間関係や漫才論議を通し、互いの芸と生き方を見詰めていく。
羽田さんは4度目の候補での受賞。作品は、30前の就職浪人が祖父をいかに「究極的な安楽死」に導くか思いを巡らす姿を通じ、現代社会の病理を描く。日々肉体改造に励む孫と、介護を受けつつ、ずぶとく生きる祖父の心理戦が印象的だ。
選考委員の山田詠美さんは又吉さんの「火花」について「書かざるを得ない切実なものが迫り、欠点もあるが、主人公と先輩の火花の散る関係がうまく出ていた。1行1行に芸人としてのコストと人生経験がかかっている」と評価した。
羽田さんの作品は「愚かな主人公を魅力的に書けている。天然ぼけを観念で引っ張っていく羽田さんの世界だ。介護が介護でなくなる瞬間を描き、新しいホームドラマを作り上げた」とした。
東山さんは初候補での受賞。作品の舞台は1970~80年代の台湾。かつて国共内戦に参加した祖父の死の謎を追う孫の前に、真実が一家のルーツと共に明かされる。日本と大陸のはざまで苦難の歴史を歩んだ台湾の光と闇を鮮烈に描いた。
選考委員の北方謙三さんは、「流」が満場一致で決まった経緯を説明し、「欠点を言う人がいなかった。20年に1度出るぐらいの画期的で素晴らしい作品で、小説とはこういう面白さを持っているんだと思わせてくれる」と絶賛した。