世相が反映? 「大人の塗り絵」が大ブーム
ブラジルで「癒やし系」人気、書店に特設コーナー開設
ブラジルで大人の塗り絵が大ブームだ。「心の癒やし」をキーワードに人気が爆発。売れっ子作家のシリーズは100万部を突破し、書店は相次ぎ特設コーナーを開設した。閉塞(へいそく)感漂う社会情勢も売れ行きを後押ししているようだ。
「新作を探しに来た」。最大都市サンパウロの書店で女性医師パンコッテさん(31)は笑顔を見せた。「子供の頃のように没頭できる」のが購入の理由という。
2014年12月に発売された作品「秘密の庭園」がベストセラーになると、多くの出版社が追随。「絵心も技術も要らない」と人気に火が付いた。書店には花園や動物、仏像など「癒やし系」がモチーフの塗り絵がずらりと並ぶ。価格は30レアル(約1200円)前後。竹林やびょうぶを描いた日本がテーマの作品も好評だ。
完成した塗り絵をフェイスブックなどで公開する人も多い。色鉛筆の売れ行きも好調で、高価な48色セットは生産が追い付かないほど。
16年にリオデジャネイロ五輪を開催するブラジルは、経済が低迷し空前の汚職スキャンダルも発覚。増税や物価上昇も国民の生活を苦しめる。
ブラジル・マッケンジー大学のメロ准教授(心理学)は、塗り絵人気と国内の閉塞感には関連があると指摘。「何かに没頭することで、社会的な不安から逃れたいという気持ちがあるのではないか」と分析している。(サンパウロ時事)