桐生祥秀、陸上男子100で9秒台を初体感
9秒87で優勝、3・3メートルの追い風参考ながら
ゴールラインをトップで駆け抜け、電光掲示版のタイムを確認した桐生は飛び上がって右手でガッツポーズ。「とりあえず参考記録でも、9秒台を初めて体感できた」。誇らしげな笑顔がはじけた。
スタートをピタリと合わせて、中盤で力強く加速。最後まで力むことなく、軽やかに走り抜ける申し分ないレース内容だった。昨年7月の世界ジュニア選手権以来の100メートル。しかも、ロンドン五輪400メートルリレー銀メダルのベイリー(米国)ら9秒台を持つ強敵を抑えての優勝。「タイムより大きいものをつかめた」。今季初戦の収穫は大きかった。
昨季は左太もも裏などのけがに苦しみ、9月のアジア大会を欠場。不本意な形で終えただけに、オフから直前のグアム合宿までじっくりとトレーニングに取り組んだ。
スタートのセット時に、前後の足の幅を広げ、苦手意識がなくなったという。日本記録保持者の伊東浩司さんに教わったストレッチで体の左右のバランスが良くなったとも感じていた。「疲れも痛みもない。冬季の成果は出ている」。土江コーチも「これまでやってきた方向性は間違っていなかった。中盤から先はまだ伸びる」と評価した。
故障を乗り越え、しっかり土台から作り直した結果、これまでと違う景色が見えた。今年の照準は8月の世界選手権。参考記録ではない、本物の9秒台はまだ先にとっておく。(オースティン時事)