米大学チーム、ウミウシの光合成の謎に迫る


藻類から葉緑体、遺伝子も葉緑体を取り込み利用

米大学チーム、ウミウシの光合成の謎に迫る

米東海岸のウミウシ。藻類から葉緑体を取り込んで光合成するが、大昔に必要な遺伝子も取り入れ、代々受け継いでいる可能性がある(米ウッズホール海洋生物学研究所、パトリック・クルーグ博士提供)

 米東海岸に生息するウミウシの一種が藻類を食べて葉緑体を体内に取り込み、光合成でも生きられるのは、葉緑体を機能させる遺伝子も大昔に取り入れて代々受け継いでいるためである可能性があることが分かった。米サウスフロリダ大のシドニー・ピアース名誉教授らが15日までに米生物学誌バイオロジカル・ブレティンに発表した。

 ウミウシは貝殻のない貝の仲間。葉緑体を取り込み利用する現象は1960年代に発見され、日本を含む各地のさまざまな種で確認された。餌がないと光合成だけで半年以上生きることもある。

 葉緑体はかつては独立した細菌であり、DNAを持つが、藻類や植物の細胞小器官となってから遺伝子が減少し、細胞核の遺伝子群がないと機能を維持できない。このためウミウシが葉緑体をなぜ維持できるかが謎とされる。

 研究対象は学名が「エリシア・クロロティカ」と呼ばれる体長2~3センチ程度のウミウシ。黄緑藻類の「バウケリア・リトレア」から葉緑体を取り込んで体が緑色となる。

 ピアース名誉教授らは詳細に解析し、クロロティカが大昔にリトレアから細胞核の遺伝子を取り入れ、自らのDNAに組み込んで代々受け継いでいると結論付けた。ただ、細胞核の遺伝子群や、これらの遺伝子が生み出すたんぱく質の取り入れ方をめぐっては異論を唱える論文もあり、解明には時間がかかりそうだ。