「向こうでも幸せに」帰らぬ夫思い支え合い


御嶽山噴火から27日で3ヵ月

「向こうでも幸せに」帰らぬ夫思い支え合い

御嶽山の噴火で行方不明になっている伊藤亮介さん(左端)。妻里絵さん(右端)と娘2人で旅行したときの写真=2006年1月撮影(伊藤里絵さん提供)

 57人が死亡、6人が行方不明となった御嶽山の噴火から27日で3カ月。安否が分からないままの三重県鈴鹿市の介護士伊藤亮介さん(39)の妻里絵さん(36)は「姿はなくても主人は私たちのそばにいてくれる。ちゃんと成仏して向こうでも幸せになってほしい」と祈る。娘2人と支え合って暮らしている。

 亮介さんとはアルバイト先で出会い、第一印象は「まめに働く人」だった。結婚して今年で16年になる。「子育ては何でもしてくれて、子供たちも優しい子に育った」。休日になると4人で旅行に出かけた。国内は東北と新潟県以外は全て訪れたという。

 9月27日、御嶽山に登っていた亮介さんと連絡が取れなくなり、里絵さんたちは麓へ急いだ。「その日は主人が夢に出てきたから無事な気がした」。だが亮介さんは見つからなかった。里絵さんも体調を崩したが、捜索が長引くにつれて「自分が倒れてはいけないと思い、少しずつ気持ちも整理していった」

 結婚記念日の10月25日、友人らを集めてお別れの会を開き、亮介さんへの感謝の言葉をしたためた手紙を読んだ。「すごく思い出がいっぱいで、主人にとっても十分太く短い人生だったのかな」と涙を拭う。

 里絵さんは、自宅で開いているパン教室を先月再開した。「今後は生活もかかってくる。生徒さんから『始めてくれてうれしい』と声をかけてもらったことは励みになった」と話す。

 これまで夫婦でやっていた床のワックスがけや窓拭きなど年末の大掃除は、長女(15)と済ませた。「なかなか手つきが良かった」と目を細める里絵さん。クリスマスには毎年家族でパーティーを開いてきたが、今年は長女が父に宛てて書いた招待状が亮介さんの写真の前に置かれた。