フィギュアＧＰファイナルで２連覇、フリー自己新

金メダルを手に笑顔を見せる羽生結弦＝１３日、スペイン・バルセロナ（ＡＦＰ＝時事）

　演技終盤。それまでのジャンプ全てを決めていたが、３回転ルッツで転倒。オーサー・コーチは思わず天を仰いだ。だが、羽生には心地良さがあった。「疲れていた。でも最後まで自分の体を存分に使い切れる幸せを感じた」

　中国杯での衝突事故から１カ月。ここまでの演技を誰が想像できただろう。冒頭ではサルコーとトーループの４回転ジャンプを成功。ともに出来栄え加点で満点をつけるジャッジがいたほどだった。圧巻の滑りで１９４・０８点。フリーの自己ベストを更新した。

　強行出場で４位に沈んだＮＨＫ杯後は国内に残り、オーサー・コーチから指示された練習に没頭した。本番形式の内容が多かったというが、「自分でも嫌だと思うぐらい追い込めた」。コーチは「私が書き出したメニューを緻密にこなしてくれれば、羽生結弦のあるべき姿に持っていける」と約束していた。そんな信頼に応える演技だった。

　中国杯での出来事は悪夢に違いない。一時は連覇どころか、ファイナル出場すら危ぶまれた。だが、恨みはない。むしろ「誰もが経験できるものではない。この状況に陥った中でどういうふうに練習していったらいいか、何かつかんだような気がした」。逆境を必ず糧とする。２０歳になったばかりの五輪王者の神髄とも言える復活だった。（バルセロナ時事）