覚悟を貫く羽生結弦、「恐怖」も振り返る
NHK杯が開幕、「今できる最高の演技を」
中国杯での衝突事故後、羽生が初めて公の場で口を開いた。「1秒にも満たないぐらいの時間差で、僕はいなくなっていたかもしれない」
後ろ向きに滑っていた羽生と閻涵(中国)は、衝突直前に偶然にもお互い振り向いていた。「何とか顔をそらすことができたし、衝撃を避けられた」。致命的な事故に至らず、感謝した。
もちろん代償はあった。帰国後は痛みで目が覚め、歩くのもままならなかった。氷上に戻っても、「(NHK杯を)やめる考えもあった」という。
それでもファイナルへのいちずな思いは消えなかった。応急処置だけで中国杯のフリーに挑み、5度転びながら2位を確保し、希望をつないだからだ。「その時の演技を無駄にしたくない」。万全の状態ではないため、演技構成の難度は下げる。アスリートとしてのプライドをかなぐり捨ててでも、覚悟を貫く。
中国杯での強行出場に批判があったのは理解している。「リスクはあったと思う。だけど、医師の診断を受けた上で出場したし、僕の意志を尊重してくれたコーチや連盟に感謝している」。特別な思いを胸に、舞台を迎える。