華麗なステップで魅了、日本男子初の金字塔
高橋大輔が現役引退、男子初の五輪メダリスト
フィギュアスケートをするのに、決して恵まれた境遇で育ったわけではなかった。経済的にも練習環境も最適ではなかったが、高橋は8歳でリンクに立ってから、ずっと人一倍の努力を重ね、日本男子で初の五輪メダルをつかんだ。華麗なステップと傑出した表現力で、観衆を魅了した。
集大成と位置付けたソチ五輪。右膝の故障で、万全では臨めなかった。結果は6位。それでも、ベストを尽くした。「受け入れるしかない。終わったことは取り戻せない。最後まで諦めずにはやれたので」。決断には時間を要したが、スケート人生に悔いはなかった。
華々しく活躍する女子に比べ、苦戦していた日本男子で10年、第一線に立ち続けた。初出場の2006年トリノ五輪で8位、10年バンクーバー五輪では、右膝の靱帯(じんたい)断裂から復活して銅メダルを獲得。同年の世界選手権、さらに12年グランプリ・ファイナルで優勝。いずれも日本男子初の金字塔だった。
「気付けば20年。漠然と夢見ていた五輪に3度も出られた。その4年、4年が自分をつくってくれた。フィギュアスケートに出会えてよかった」。高橋はすっきりとした表情で振り返った。
ソチ五輪で羽生結弦(ANA)が日本男子初の金メダルを手にした。初めて表彰台に上がった先駆者として、高橋の功績は小さくなかった。